2018年6月24日日曜日

【タイ】シャンプーの広告で描かれるトランスジェンダー女性と父親の物語

[画像]タイの国旗
ユニリーバ社のシャンプー・ブランド「サンシルク」のタイ向けCMを紹介します。トランスジェンダー女性と父親の物語を描いていて、1月頃に公開されると、タイ国内だけで48時間のうちに250万回、2カ月で3700万回再生され、大きな反響を呼んだそうです。

CM制作は広告代理店のジェイ・ウォルター・トンプソン・アジア・パシフィック。
出演しているロック・クワンラダー(Rock Kwanlada)は、タイのトランスジェンダー向けミス・コンテスト「ミス・ティファニーズ・ユニバース(Miss Tiffany's Universe)」の2017年の準優勝者。CMの物語も彼女の人生がモデルになっているそうです。

「Hair Talk」と題された約4分30秒のCMは、主人公の「髪」によるナレーションで物語が進みます。「髪」は最初、主人公の置かれた状況や髪に固執する理由が理解できないのですが、次第に分かるようになっていきます。
英語字幕を簡単に訳してみました。


(字幕)トランスジェンダーたちはタイ社会の中で長い道のりを歩んできた。
しかし、固定観念がいまだ支配的で、家族から受け入れられることは大きな壁となっている。

―男の子は私(髪)を長くしちゃダメだと人は言う。でも、その男の子が男の子になりたくなかったら?

1cm
―私はあなた(主人公)が理解できずにいる。あなたはずっとおもちゃに執着してる。

―他の子から貸してと強く求められた時だって。

父「なぜ、からかわれても抵抗しないんだ? それでも男か? 父さんが身の守り方を教えてやる」

―そしてあなたは自分の世界をふたつに引き裂き始めた。

―高校の時は私が目にかかるほど伸びるのを待ち望んでたね。

5cm
―片方の世界はとてもあなたらしかった。たいていは楽しかった。たいていは、ね。

―でも、もう片方の世界…あなたのお父さんが望む世界は、崩壊してた。

28cm
―私を短く切ればお父さんは喜んだのに、あなたがしたのはその正反対。

―切ればいいじゃない、私はただの髪なんだから。

―本気なの? 自分らしくいることがあなたの一番愛する人を傷つけることになるって気づいてる?

ロック「パパ、コンテストに出場してきた」

インタビューに答えるロック
「私のような息子を持ってどんなふうに感じているのか、父に尋ねたことはありません。私はずっと隠して、偽ってきましたから。いつか、父にも本当の私を知ってもらい、受け入れてもらえたらと思います」

(スマホでインタビュー動画を見つめる父親)
メールの送信者 “これ、お前の息子か?”

父(ロックに)「おめでとう」

メールに返信する父 “うちの娘キレイだろ?”

父「大丈夫。何があろうとお前は私の子供だ」

―ようやくあなたのことが理解できた。

47cm
―私が長くなればなるほど、あなたはあなたらしくなっていくのね。

(字幕)自分の髪で、望み通りの女性になろう。

《参考》
JWT shampoo ad tells emotional true story of transgender beauty queen in Thailand | Mumbrella Asia

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このCMは先日取り上げたフィリピンのCMと少し似ていて、登場するのがフェミニンな息子と父親という組み合わせ、そして学校には居場所があるという点が共通しています。
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