* 日本では大正製薬から販売されている。
この3分半ほどの映像作品では、インドの少女が自分を養子として育ててくれている母親について語っています。実話です。
少女のモノローグの内容を英語字幕を元に簡単にまとめてみます。
少女は休暇を終えて寄宿学校に戻るバスの中。
- ママは私が医者になると思っているから、私にその気がないと知ったらがっかりするだろう。
- ママは18歳の時、父親に家から追い出され、ひとりで生きてきた。ひとりで生きるなんて考えるだけで怖い。
- 私は自分の父に会ったことがない。生みの母は病気で寝たきりで、ある日、救急車で運ばれたきり帰って来なかった。それで今のママと暮らすようになった。
- 私が病気の時は夜通し看病してくれるし、ドレスを買ってくれたり、お菓子や料理を作ってくれたり、一緒にホラー映画を見たりする。
- 一緒に暮らすようになって10年。ママというより友達みたいな存在。
- これが私のママ。すてきでしょ?
- ママは困難の多い人生を送りながら、それでもいつも私の面倒を見てくれる。
- 公民の教科書には全ての人に基本的人権があると書かれている。それならなぜママには与えられていないの?
- だから私は医者にはならない。弁護士になるの。ママのために。
- (字幕)多くの困難をものともせず、Gauri Sawantは親のないGayatriを我が子として育てている。
この作品はヴィックスの「Touch of Care」というキャンペーン用にシンガポールの広告代理店が制作しました。母の愛情や、血縁よりも愛情でつながっていることの大切さを、現代的な家族像で表現しようとしたようです。
・Vicks' new ‘Touch of Care’ ad campaign is going viral for all the right reasons |ETBrandEquity
再現ドラマ風ですが、お母さんのGauri Sawantさんはご本人です。娘さんはGauriさんの希望で出演しておらず、別の人が演じています。
演出は映画『生と死と、その間にあるもの(Masaan)』の監督、ニーラジ・ガイワン(Neeraj Ghaywan)。最初、Gauriさんが出演依頼を断ると、監督みずから説得に行きました。また彼は「ブランドは二の次。映像に二度も三度も商品が映れば誠実さが損なわれる」というような話もしていて、単なる広告以上の意義を感じていたようです。
・Transgender activist Gauri Sawant hopes her viral video will give her dignity |Mid-Day
Gauriさんはソーシャルワーカーでトランスジェンダー活動家。ムンバイでトランスジェンダーやヒジュラ(ウィキペディア)、MSM(ウィキペディア)を支援するNGO団体「Sakhi Char Chowghi Trust」のディレクターを務めています。動画に出てくる父親から勘当されたという話も、彼女の女性的・同性愛的な振る舞いが原因でした。
少女を引き取ったのは10年ほど前、少女が6歳の時でした。セックスワーカーだった生みの親がエイズで亡くなると、その母親が孫娘をいわゆる“赤線地帯”に売ろうとしたそうで、それを知ったGauriさんが少女を救い出しました。
・Gauri Sawant- How I became a Mother |Mumbai Mirror
・If something happens to me, I don't want her to return to the streets: Gauri Sawant |DNA
↑このインタビューでは、トランスジェンダーが子供を育てることの苦労や、インド社会で女の子を育てることの苦労を語っています。
インドではトランスジェンダーが子供を養子に迎えることはできないそうで、Gauriさんと娘さんも法的に認められた親子関係ではないようです。それでなぜ一緒にいられるのかは分かりませんが、インドの貧困層特有の状況があるようです。
・Trans People Would Love To Adopt As Shown In The Powerful Vicks Ad, But They Legally Can't |Huffington Post India
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…と、これを書いている最中に、今度は石けんのDove(ユニリーバ社)がトランスジェンダーの母親を起用したCMを公開しました。
Dove Includes a Transgender Mother in Their #RealMoms Campaign |Cosmopolitan
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