2019年12月6日金曜日

同性カップルの子供たちから、子育て中のゲイの親へアドバイス

[画像]カラフルに描かれた家の絵
ゲイや同性カップルが子供を育てることへの批判として、「悪影響がある」「いじめられる」「子供も同性愛者になってしまう」という声が聞こえてきます。しかし、そうした言葉をプレッシャーに感じているのは、ほかでもない子供たちのようです。

アメリカにゲイ(とバイセクシュアル、トランス男性)の父親向け育児情報サイト「Gays With Kids」があります。このサイトでは子育てのアドバイスを求めて、80~90年代に同性カップルのもとで育った女性数人に話を聞きました。
記事では、20年前と今では同性カップル家族を取り巻く環境はずっと良くなっているものの、子供たちが直面する困難には変わらない部分も多く、現代の親も参考になるはずだとしています。
レッスン1から10まで駆け足で紹介しますが、もともとが長い記事なのであまり短くなっていません。
ゲイという言葉は男女問わず同性愛の意味で使われていて、ストレートは異性愛の意味です。

Talking With Grown Kids of Gay Parents | Gays With Kids(2015年)
あなた方は親だ。悪いこと全てから子供を守りたいはず。コンセントに指を入れようとすることや、膝をすりむくこと、意地悪な子供たち。特に若い頃のあなたを苦しめた“のけ者”の気持ちからはなんとしても守りたい。ゲイのパパがいるという理由で子供に嫌な思いをさせる人がいたら、やっつける準備はできているはず。

そして――残念ながら――あなたは失敗する。

レッスン1:子供に親のことを秘密にさせないようにしよう

同性カップルが今以上に非難にさらされやすかった時代、多くの親が同性カップルという側面を隠すことで子供を守ろうとしました。同時に、子供たちも親を守るために親のことを隠しました。しかし、こうした秘密は子供には重荷だったようです。

1981年生まれのドリ・カヴァナーはLGBTQの親を持つ人を専門に扱うセラピストです。彼女自身、両親の離婚後に母親とパートナー女性のもとで育ちました。
しかし、「家族」として見られないよう、表向きはシングルマザー母子とその女友達として暮らしていたため、ドリ自身も秘密を抱える息苦しさを経験しました。
ドリは、親を守るために沈黙を貫くというのは子供にはひどく疲れるもので、子供にそんな思いをさせないでほしい、自分たちは望むべくして家族になったのだと教えてほしいと語っています。

ロビン・マーキスは1988年に2人の母親とゲイ男性のドナーのもとに生まれました。ロビンは、ゲイだということをオープンにしている人たちが計画的に子供を持つようになった最初の世代だそうです。
家族が暮らしていたニューメキシコ州の小さな町で、母親は自分たちのことを隠しも公表もしないというスタンスでしたが、それは周囲の人々が誰も触れない公然の秘密と化し、石の壁のように人を遠ざけていました。
母親たちはいつもロビンに言っていた。
「嘘はつかなくていいからね。私たち[]を守る必要はないんだよ」
しかし、見知らぬ誰かから電話がかかってきた時、あるいは病院で、母親たちは「パートナー」のような言葉を使った。当時はパートナーという言葉が同性カップルという意味になることはあまり知られていなかった。相手が理解したならセーフだし、ビジネス・パートナーだと思われたとしても、それもまたセーフということだった。
ロビンもこうした巧妙さを知らず知らず身に着けましたが、子供の頃は大変な重荷になっていたようです。
子供はそういうふうに物事を学ぶのだとカヴァナーは強調する。つまり、子供は親の言うことではなく行動を見て学ぶのだ。そうした秘密を渡せば子供にとってはより重いものになる。ゲイであることを気楽にとらえられるよう手本を示すのがあなたの役目だ。

レッスン2:子供は親を守る必要はないと教えよう

日常生活のなかで反同性愛の言動に触れたとき、子供は大人のような防御力もスルーする技術もなく「スポンジのように吸収」してしまいます。

1970年生まれのジェニー・レインは父親のカミングアウトで両親が離婚したため、普段はイリノイ州で母親と継父と暮らし、夏休みはワシントンD.Cで父親ともう一人の継父と共に過ごしました。4人の親から大切にされて最高の環境だったといいます。
しかし、ジェニーが中学生の頃はエイズ危機の初期で、メディアはゲイ男性をみだらで不道徳な存在として描き世間の恐怖をあおっていました。ジェニーは社会の非難を必要以上に引き受けてしまったと語っています。
父親たちと散歩中に同性愛蔑視の言葉が飛んできたこともありましたが、当時はゲイ自身さえ抵抗する言葉を持たなかった時代、彼女はどうしていいかわからず黙り込むしかありませんでした。
「私たちはそうしたこと[悪意への対処法]についてあまり話しませんでした。『これはどう思う? これはあなたのアイデンティティにどんな影響を与えた? これはあなた自身にどんな影響を与えた?』こうした会話は起きませんでした」
彼女の父親は試みはしたものの、
「私の父はドイツ系でしたから……。私たちは家族でそうした話をすることは全くありませんでしたし、それが私には大変でした。沈黙は助けにはなりませんでした」

アメリカにはLGBTQの親を持つ子供を支援する団体「COLAGE」があります(1990年設立)。エグゼクティブ・ディレクターのアニー・ヴァン・エイヴリーは、ある親子のエピソードを紹介しています。
ある男性カップルは、息子のジョナ(仮名)がいじめられないように学校や周囲の保護者とも協力して常に気を配っていました。それでもジョナは中学生の間、毎日、父親がゲイだという理由で悪質ないじめを受け続けました。しかも、そのことを高校に上がるまで父親たちに言えずにいました。その事実を知った父親たちはがく然としたそうです。
なぜ父親たちに黙っていたのか? それは息子を悪意から守ろうとする父親たちの決意が固かったからだ。それが父親たちの優先事項だった。だからジョナは父親たちを守ろうとした。父親たちに失敗したと感じさせないように。自分たちがゲイだったせいで息子を傷つけていると考えて苦しまないように。

ここから何を学べばいいだろう? 残酷な言動や差別、いじめは起こるものだと子供に伝えよう。“Haters gonna hate”[悪意を振りまく奴は何したってやめないから放っておけ]みたいなことを。
ほとんどの人は私たちのことをあまり深く考えていないから「母親」「父親」と書かれた記入用紙を配ってくるけれど、そこに排除の意図はないのだと伝えよう。そうした出来事はつらいものだが、教育の機会だと捉えれば世界の終わりではない。
何か嫌な気持ちにさせられることがあれば、どんなことでも親や他の大人に話すよう伝えよう。そして、話してくれた時は批判せず耳を傾けよう。飛びついて問題を解決しようとしないように。子供が自分なりの乗り越え方を見つけるのを見守り、求められたら力になろう。

レッスン3:子供もカミングアウトの必要に迫られる

ロビン・マーキスは高校時代、親がゲイだとは言えず、母親のパートナーのことを話すときは代名詞を変えたり省略したり、時には父親(ゲイのドナー)と合体させて架空の「パパ」を作り出したりもしました。
大学を出た後になって親がゲイだと言えた時は、心のなかの重い石の壁を乗り越えたような、忘れられない瞬間だったといいます。
こうした選択は子供自身の意思を尊重したほうがいいようです。
家族のことを誰に話すか話さないか、子供が小さいうちはあなたが決めるだろう。しかし大きくなれば、ゲイの親がいることをカミングアウトするかどうか、言うならいつ、誰に言うのか、大小さまざまな状況で子供が決めなくてはいけなくなる。特に中学生以降は、いつ、どのように言うか決める余地を子供に与えよう。感情的なコストを払ってまでも人に話す価値がある場合もあれば、ない場合もある。それは子供の決断だ。子供がどのように決めるかは、部分的にはあなたが示した手本次第だし、部分的には子供のリスクとリターンのセンス次第だ。

レッスン4:自分たちの家族構成について子供と話そう

私たちの新しい家族モデルは、私たちにはクリエイティヴに見える時もあるが、子供には曖昧でよく分からないかもしれない。あなたの家族が他とは異なっているなら、その違いについて年齢に応じた会話をこれからも続けよう。

ロビン・マーキスは2人の母親のもとで暮らしていましたが、ドナーだったゲイ男性も彼女たちの生活に関わり続け、大切な日や年に一度のキャンプには一緒に過ごしました。
母たちからは「パパ (dad)」と呼ぶよう教えられていましたが、その呼び方は10代のロビンを苦しめました。この人がパパならどうして他の子のパパのように毎日会えないのか。「パパ」は一緒にいる間もよそよそしく、ロビンは父親から見捨てられたように感じていました。
振り返ってみれば、親は[家族に関する]同じ用語を使いながらも、核家族を超えた別のモデルを作り出そうとしていたのだと分かる、とロビンは言う。だが親はそれをロビンに伝えたことがなかった。それに「パパ」という言葉は強力すぎて、何の説明もされないままで微調整はできなかった。ロビンは父親のよそよそしさにひどく腹を立てていたので、数年の間、全く口をきかなかった。

レッスン4-2:パパたちは特にお嬢さんに気を配って

さらに悪いことに、父親はロビンの男兄弟とは親密な関係を保っていた。ロビンは、父親はゲイで男が好きだから女の自分は好かれていないのだ、と気に病んでいた。
「あれは内面化した同性愛嫌悪だったんだと思います」と彼女は振り返る。
このように感じたことがあるのはロビンだけではありません。特に中高生くらいの女の子はこうした不安を抱く可能性があるため、娘のいる父親は心構えをしておいたほうがいいそうです。

ロビンと父親の関係は後に改善しました。ロビンは、母親よりも父親と深いつながりを感じる部分もあり、今では自分の人生にいてくれて感謝していると語っています。

レッスン5:他のゲイやレズビアンの家族と会おう

私たちは皆、自分と同じような人たちのコミュニティや、自分のことを説明しなくてすむ相手を必要としている。初めてゲイの友達ができた時にどれほど自由を感じたか覚えているだろうか? 私たちの子供にもそれと同じか、もしかしたらそれ以上のものが必要だ。
オンラインで近くの家族を見つけたり、LGBTQファミリー向けのイベントに参加するなど、どんな形でもいいので、自分と同じような子を他に知らないという孤立した状況にしないことが大切だそうです。

ロビン・マーキスは前述した支援団体「COLAGE」のプログラム・ディレクターも務めています。
「この仕事をして何年も何年も何年も経ちますが、『自分と同じように親がゲイだという人と初めて出会った時のことを覚えていない』という人には会ったことがありません」
翻訳の必要なくリラックスできるというのは全ての人間が必要としていることだ。
「それは自分自身の見方を学び、自尊心を形成する上で非常に大きな役割を果たします」

レッスン6:自分の家族は問題ないと証明しようとする子供の重荷を下ろそう

ゲイの親を世間の非難から守るためには、完璧な家庭の完璧な子供でいなければならないとプレッシャーを感じる子は珍しくないようです。
子供たちはゲイ・ファミリーに対する風当たりの強さを知っている。ゲイの人が子育てをすべきかどうかについて、自分の健康適応度[? healthy adjustment]と幸福度が別紙Aに添付される[研究資料として扱われる]ことも知っている。
ロビン自身、「大変なこともあると正直に話せるまで本当に長い時間がかかりました」と語る。
欲求不満や怒りについて語ることは親への裏切りではない、他の子たちもそうなのだと子供に教えておこう。

ジェニー・レインはアラバマ州の女性カップルを訪ねた時、そこの息子と二人きりで話す機会がありました。
「その子は一連の質問をしてきました。『子供の頃、お父さんのことを恥ずかしいと思ったことはある? こんなふうに感じたことは? あんなふうに感じたことは?』」
レインが、恥ずかしいと思ったことはもちろんある、と言って安心させると、彼はさらに踏み込んできた。
「『例えば、お父さんが手を繋いできた時とか、恥ずかしかったことはある?』」
レインは異性愛の両親と同性愛の両親の両方を経験していたため、どんな子も親から愛情を示されたら恥ずかしく感じるものだ、それは相手がゲイだからではなく親だからだ、と言って安心させることができた。

レッスン7:子供はあなたの性的アイデンティティを揺さぶるかもしれない

ストレートの親のもとで育つ子供のなかにゲイがいるように、ゲイの親のもとで育つ子供のなかにもゲイ(や性的マイノリティ)はいます。親もゲイならカミングアウトも楽だろうと思われがちですが、実際はストレートの親に言うよりも大変な場合が多いそうです。
理由のひとつは、ゲイの親が育てる子供は「正常」だと証明しなければならないというプレッシャーだ(上記のレッスン6を参照)
子供である自分もゲイだったら、世間からは「子育ての失敗」と見なされ、親が非難されてしまう。そうしたプレッシャーはカミングアウトを困難にします。

もうひとつの理由は、一口に性的マイノリティやLGBTQといっても親子で定義が違う場合があるからです。子供世代と親世代ではセクシュアリティ関連の言葉や概念、さらに恋愛観も変化します。そのため、ゲイの親でも子供の性のあり方を理解できないことがあるそうです。
ロビン・マーキスは自分も女性に惹かれていることに気づき母親に話しましたが、母親の一人は一時の気の迷いのようにとらえ信じてくれませんでした。
「母からは、『ストレート女子が[同性にも気があるそぶりを見せて]ゲイ女子の心をもてあそぶようなことはやめて』と言われました。当時、私は19歳でしたが、母たちは2人とも20代になるまで女性と付き合ったことがなかったんです!」
それは驚くほど侮辱的な拒絶であり、自分自身の家族から「他人扱い」される疎外感のある経験だった。

レッスン8:子供はアライではなく、文字通り、家族

逆に子供がストレートだった場合も「祖国から追放されたように感じる」可能性があるといいます。
同性カップルの子供たちは、同性婚を求める運動やプライド・イベントに参加するなど、LGBTQカルチャーの内側で育ってきました。そうした子がストレートだと気づく過程でアイデンティティが揺らぐことは珍しくないそうです。
また、大人になってからもLGBTQコミュニティの一員だと感じている人は多いのですが、ストレートだという理由で部外者扱いされることもあるようです。
文字通りの家族だというのに「アライ[同盟、支援者]」と呼ばれたい人などいない。自分が育ったコミュニティやカルチャーから追い出されることに激怒し気分を害する者もいる。共に社会の非難にさらされているという感覚さえ、その[帰属意識の]一部だ。

レッスン9:子供に私たちの文化史を教えよう

レッスン8で指摘されているように、LGBTQコミュニティに深いつながりを感じている子供も多いため、ルーツである歴史や文化を教えることも大切だそうです。映画やドキュメンタリー、本など、自分たち家族にとって最も自然に感じられるものを活用しながら、負の歴史も避けてはいけないといいます。
それがフランク・カムニー[*]の解雇であろうとエイズ時代の憎しみであろうと、今より過酷だった時代を敬遠してはいけません。子供はあなたたちがそうしたことに尊厳をもって立ち向かったのだと知る必要があります。子供は自分の居場所がどこなのか、いまだ残る課題は何か、理解する必要があります。
* フランク・カムニー(Frank Kameny) アメリカにおけるゲイ人権運動の草創期の活動家。1957年に同性愛を理由に政府から解雇され、それをきっかけに活動を始めた。

レッスン10:もちろん今は昔よりよくなっている

現在は「COLAGE」のような組織化された大きなコミュニティもあり、同じ立場の者同士で支え合うことができます。
また、子供たちの親は結婚できるようになり、ゲイの有名人やその家族がテレビ越しに見えるようにもなりました。そうした変化によって人々の意識も変わり、同性カップルの家族が世間の人にとって「理解しやすい」存在になることで、子供たちも生きやすくなってきたといいます。

ドリ・カヴァナーには社会の変化を肌で感じる出来事がありました。夫との最初のデートの時です。
ドリは最初のデートでスクリーニング装置としてゲイの母親を話題に出すということを始めていた。不快になる人や、逆に興奮しすぎる人をふるいにかけるためだ。
「彼に言った時、何も言いませんでした。ただ『あ、そう』と。まるで何でもないことのように。そして私も何でもないことにしたかったんです」

あなたのお子さんにもそれがあてはまりますように。

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