《参考》Same-sex marriage survey sparks spike in access of LGBTI mental health support | ABC News
こうした状況を見越したように、8月にオーストラリア心理臨床学会(Australian Psychological Society)が、「同性婚関連の話題について子供と話し合うためのコツ」というテーマのガイドを公開しました。同学会は2万人以上の会員を有する国内最大の心理学会で、同性婚には賛成の立場を表明しています。
このガイドはPDF形式で全4ページあります。長いので大まかな内容が分かる程度に、雑に要約してみました。実際はもう少していねいに書かれています。
・Talking to young people about marriage equality and other issues | Australian Psychological Society
・
※現在、リンク切れ → slidelegend.comというサイトで読めます。
《追記》
内容を少し整理したバージョンを新たに作成したようです。↓
・Communicating about marriage equality and other issues | Australian Psychological Society
・Talking with children and young people about marriage equality and related issues (PDF)
子供や若者と同性婚に関する話をしよう
子供は非常に幼い頃から人間関係や愛情、ロマンス、結婚、ジェンダーについて学び、価値観を形成していく。今回の婚姻の平等(marriage equality)をめぐる議論は結婚だけでなく、人との関わり、多様性、平等、正義、公正さについて話す重要な機会だ。子供たちはすでに今回の議論について耳にしていると同時に、LGBTQI+の人々への偏見ある否定的な発言も聞いているだろう。こうした発言は特に同性カップルの元で育つ子供や、性のあり方を模索している若者を動揺させる。
このテーマで子供と話すのは重要だ。以下は親や保護者、教師が子供と話すときの助けになるよう書かれた。
話題にしてもいいと教えよう
子供たちはすでに婚姻の平等や国民投票について耳にしている。話題にしてもいいのだと子供に伝えよう。「聞きたいことがあれば喜んで話す」と大人から切り出していい。子供が本当に知りたいことに耳を傾けよう
子供はどこかで聞いてきたことをそのまま口にすることがある。大人は注意して耳を傾け、問いかけ、子供が本当に知りたいことは何か見極めよう。LGBTQI+関連の用語や人間関係について話そう
子供たちはLGBTQI+関連用語の意味を知らなかったり、否定的な意味で覚えていることがある。- 言葉の意味を聞かれたら率直かつシンプルに答える。
- 愛情や真剣な交際に焦点を合わせて話す。
- 人が人を愛するというのは実に多くの形があると伝える。同性を好きになる人もいれば、異性を好きになる人もいる。
- 性的指向というのは誰を愛するか、誰にひかれるかということ。
- 子供が知っている人で同性同士の関係にある人を具体例として挙げる。
婚姻の平等の意味について話そう
- 結婚とは愛情や誓約、責任にまつわること。
- 結婚式とはお祝い、真剣な交際の承認。
- 人は同性との交際を望む場合もあれば、異性との交際を望む場合もある。
- オーストラリアでは2004年にできた法律によって、結婚が男女間に限定された。
- 婚姻の平等の法律とは、法的な結婚の定義を「男女」から「2人の人」に変えること。「同性婚」と呼ばれるが、トランスジェンダーや多様なジェンダーの人たちが、法的には同性となるパートナーと結婚できるようにもなる。
- 調査ではオーストラリアの成人の大半が婚姻の平等を支持している。
- 英語圏の先進国で同性婚が許されていないのはオーストラリアだけ。
- 同性カップルに異性カップルと同じ権利を与えないのは差別である。
- 差別は人に害を及ぼす。
パートナーシップの新たな視点を提供する
- 全ての人が結婚したいと思っているわけではない。
- 結婚以外にも愛情や誓約、責任を示す方法は多い。一緒に暮らす、一緒に子供を育てる、離れて暮らしながら愛情ある関係を築く、忠実な友人となる、など。
- 愛し合う形もさまざま。誰かとカップルになりたい人ばかりではない。
- しかし、人々の結婚に対する考えがどうあれ、結婚するかしないかを選べるのは権利である。そこは婚姻の平等の議論で重要な点だ。
今回の国民投票に関する混同や誤解を正そう
- オーストラリア人の大多数は婚姻の平等を支持しているが、思想的、宗教的理由から反対する人もいるし、慣れ親しんだことが変わるのを望まない人もいる。世の中には多くの課題があるが、その全てに国民投票が行われるわけではない。
- 子供の話に耳を傾け、誤解を正そう。現実的な理解の手助けとなる誠実な説明をしよう。これは向社会的(*反社会的の対義語)な価値を学ぶ大切な機会でもある。
- 宗教的な立場から反対する人もいるが、全ての宗教が反対しているわけではない。私たちの社会の重要な原則である政教分離について教えよう。また、結婚の法律を変えても教会や牧師は今まで通りの儀式を行える。
- 同性カップルの子育ては有害だという意見は事実ではなく、さらに今回の議論とは無関係。婚姻の平等というのは同性同士が法的に結婚できることであり、彼らが子供を持つべきかどうかという話ではない。子供がいる同性カップルはすでにたくさんいて、同性婚を阻止したところで、こうした家族が減るわけではない。研究も同性カップルの子供と異性カップルの子供は差がないと示している。大切なのは親の性別ではなく子供への愛情とケア。
子供が同性愛嫌悪発言を聞いて動揺したら、子供の話を聞き、気持ちを表現する機会を与え、抵抗力を身につける機会をつくろう
- 子供の感情を認める。
- 感情を言葉にできるよう手伝う。
- 自分の性的指向や性自認に疑問を持っても構わない、この世界にはさまざまな“人のあり方”があると伝える。
- ありのままのあなたを愛している、あなたはいじめには値しないと伝える。
- 子供が興味のある活動を通して、自信や自己回復力を身につける機会を設ける。スポーツ、音楽、ダンスなど。
- 学校生活のなかに同性愛嫌悪的な言動があれば学校に報告して対応策を聞く。
- 子供が悪口やからかいへの適切な対処法を見つけ実行できるよう手伝う。
- 本やウェブサイト、映画を利用して、多様な家族を子供に見せる。
- あなた自身や身近な人の言動に注意する。意地悪な発言や無知な発言というのは、言われた側ではなく言った側の人間性を明らかにする。
- セルフケアを実践し、子供もセルフケアできるよう手伝う。あなたも子供も、広告やニュースを全て見る必要はない。安全だと感じられない会話からは距離を置き、自分の好きなことをしよう。
他者の扱い方について話そう
婚姻の平等をめぐる議論は、他者との接し方や、どんな社会を望むかを話し合ういい機会だ。同性愛嫌悪やヘイト、偏見は生まれつきではなく学ぶものだ。- 全ての人に敬意が払われるべきだと教える。性的指向や性自認、人種、宗教、文化を理由に暴力を受けても仕方がない人などいない。
- LGBTQI+の人を表す言葉を使って人を笑い者にするのは、言われた人だけでなく、その周りにいるLGBTQI+の家族や友人も傷つける。
- どんな集団を表す呼び名も侮辱目的で使うのはよくない。
- 他とは異なる人に向けるヘイトは許容されない。ヘイトにヘイトで立ち向かうのも問題解決にはならない。
- 偏見に基づく言動やいじめに立ち向かう方法について話し合う。
専門家に助けを求める
同性婚や国民投票をめぐる議論の中で、あなたや家族にさらなる援助が必要なら、私たち学会の心理学者が力になれるかもしれない。《関連》
この学会では大人向けのガイドも公開しています。
・Tools for communicating about marriage equality and related issues (PDF)
・よくあるご質問|一般社団法人Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に
・同性婚 Q&A|NPO法人EMA日本
《ブログ内関連ページ》
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