これに対する回答は、これまでに見たかぎりでは、おおむね共通しているように思います。
- 性的指向が変わったと感じる人はいる。
- だが、本人や周囲の人がコントロールできるものではない。
- 自分自身に対する理解は生涯を通じて発展・変化するもの。性のあり方についても同じ。
- しかし、子供の今の気持ちを疑ったり否定したりすると信頼関係を損ねるおそれがある。
今回はアメリカのシアトル小児病院のブログから紹介します。10代の同性愛/両性愛者の子を持つ親向けの記事で、執筆者は正看護師のジェン・ブラウンさんです。
原文ではティーンエイジャー(13〜19歳)と書かれていますが便宜的に10代と書きます。
Parenting Lesbian, Gay, & Bisexual Teens, Part 5: Is This Just a Phase? | Teenology101 (2012)
子供からカミングアウトされた親のよくある反応のひとつが、単なる一過性のものではないかという“疑いや希望、あるいは不安”だそうです。子供の気の変わりやすさを知っていればそう考えるのも無理はない、とジェンさんは言います。
去年はジャスティン・ビーバーに夢中になり、政治的無秩序を擁護し、音楽業界を目指すと言っていた。今年はレッド・ツェッペリンと民主党にはまり、将来は金融の仕事に就くと言う。セクシュアリティもそのパターンでしょ?
ジェンさんによると、10代の子のこうした帰属意識の強さと移ろいやすさは、自分自身のアイデンティティを模索している時期だからだそうです。そして性的指向は“ロックバンドとはわけが違うけれど、不変不動というわけでもない”といいます。
そもそも同性愛や両性愛、異性愛といったものは人が作り出したカテゴリーに過ぎず、実際には境界線があるわけではありません。生涯にわたって同じところに留まる人もいれば、人生のどこかで“予期せぬ変化に直面する”人もいます。バイセクシュアルの人も必ずしも常に50:50の割合で男女に惹かれるわけではないといいます。
私たちは物事を単純化するために、カテゴリーを選んでそこに留まるよう人に求めますが、人というのはそんなに単純なものではありません。
良好な親子関係のためには、子供の将来の恋愛対象が同性か異性かにかかわらず、彼らの今の気持ちを尊重し支えることが大切なようです。
[子供の性的指向を]変えようと思っても、あなたにできることは何もありません。将来、お子さんのセクシュアリティが性的指向の範囲を移動しようがしまいが、いま現在、彼らはゲイの、レズビアンの、バイセクシュアルの10代なんです。そして彼らに必要なのは、お子さんに対するあなたの愛情が性的指向に左右されないと知ることです。
同性に惹かれることに対して親が否定的な態度をとると、親子関係にしこりを残す場合があります。たとえば将来、異性を好きになったとしても、そのとき子供は「これで親の愛情を取り戻せる」と感じてしまうかもしれません。そうではなく、子供にとって大切なのは「性のあり方を模索していたあの時期も親は味方でいてくれた」と思えることだと言います。
子供にとって親へのカミングアウトは非常に困難で、決意する段階ではすでに自問自答を繰り返し、確信に至っている場合が多いようです。それを一時的なものに過ぎないといって取り合わないのは“危険だ”とジェンさんは言い切ります。
もしあなたが尻込みする、笑い飛ばす、あるいは子供のセクシュアリティが「正常」に戻ると考えているように振る舞えば、子供はもうどんな話題であっても、あなたに打ち明ける可能性は低くなるでしょう。最初の投稿[*]で言ったように、カミングアウトされた時に無理に嬉しそうにする必要はありませんが、真面目に受け取らなくてはいけません。* 元記事は全6回シリーズのひとつ。
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