2013年12月4日水曜日

若きゲイの科学者ジャック・アンドレイカと彼を支える家族

ジャック・アンドレイカの画像
©TEDxNijmegen 2013
少し前に10代の少年、ジャック・アンドレイカが膵臓がんの画期的な検査方法を開発したというニュースが話題になりました。
彼はまたゲイでもあるのですが、本題とは関係ないこともあり、触れられることはありませんでした。
しかし、The New Civil Rights Movementの記事を読むと、彼が「ゲイの科学者」として見られることにも意義を見出していることがうかがえます。

「一番の願いのひとつは、僕がゲイだと公表していることでLGBTの若者が刺激を受けて、理数系の分野に進んでくれることです。僕にはロールモデルといえる人はアラン・チューリングくらいしかいなかったから」
Standing On The Right Side Of History: 16 Year Old Jack Andraka Is ‘The Edison Of Our Times’

同記事には家族と周囲のサポートについても書かれています。
ジャックがゲイだと自覚したのは6年生の時。しかし、バレたらみんなに嫌われると思い、その後2年間は誰にも言いませんでした。8年生になり友人たちに話すのですが、その中の一人が親に話し、そこからジャックの母親の耳に届くことになります。

母親のジェーンさんはこう振り返ります。
「夫と話し合い、同性愛は生まれつきのものだろうし、自分自身を別の型に押し込めるよりも開放したほうがいいということを共有しました。息子には、性的指向は人の一部にすぎないこと、大切なのは誠実で思いやりを持ち、自分の可能性を最大限に活かすことだと教えました」

「ゲイだという理由であなたを支えてくれない人もいるだろうけれど、セクシュアリティに悩んでいる10代の子たちの良いロールモデルになれる。支持してくれない人たちには同性愛者も社会に大きく貢献できることを示せる、と話し合いました。上の息子は一番驚いていたけれど、学校の先生で大学時代にゲイのルームメイトがいたという人がいて、その素晴らしい先生と話をすることでとても協力的になり、今では学校でゲイの生徒たちを支援するようになりました」

親戚の中には、キャリアにマイナスになるからゲイだということは黙っていた方がいいと言う人もいます。しかし、彼は科学の場で自分が何者かを隠すべきではないと言います。
「科学で重要なのはアイデアと仕事の質。自分自身に正直であるのは大事なことです」

学校でもゲイであることが問題になることはないそうです。
アメリカでは性的少数者の若者がいじめによって自殺に追いやられたり、勘当されてホームレスになったりすることが(最悪のケースとはいえ)珍しくありません。彼がそうした厳しい環境に置かれていたら、研究に集中することも今回の成果をあげることもできなかったかもしれません。

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先日、科学者としての功績を称えられバチカンから表彰されました。
「ゲイの科学者がバチカンに認められるなんて本当にすごいことです。ほんの数年前ならありえませんでしたから。進歩の橋渡しの一端を担えるなんて最高です。それだけ世界がゲイやLGBTの人たちを受け入れるようになってきたということです。本当にすごい」
Young Gay Scientist Honored by Vatican | Advocate.com

《参考》
ジャック・アンドレイカ: 有望な膵臓がん検査 ― なんとティーンエージャーが開発 | TED.com
15歳の少年、膵臓がん発見の画期的方法を開発 たった5分、3セントで検査 | ハフィントンポスト
The Genius Of Raising Brilliant Kids: A Conversation With Jack Andraka's Parents | Forbes
ご両親が教育方針について語っています。
He’s 16, still in braces and by the way he’s invented a test for cancer | London Evening Standard
ジャックとお母さんが家庭や学校での様子を語っています。

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