2013年12月28日土曜日

[体験談]スカートをはく息子と母親の手探りの子育て

テキスト画像「体験談」
Raising My Rainbow』という育児ブログがあります。アメリカ、カリフォルニア州に暮らすローリー・デュロン(Lori Duron)さんが、「女の子みたいな息子」を育てる中で起こる出来事や思いを綴っています。
今年はブログと同名の本が出版され、テレビやラジオ出演などもされているようです。今回はThe Daily Beastに掲載されたローリーさんのエッセイを簡単に紹介します。

My Pink-Loving, Princess-Crazy Son |The Daily Beast(2013年)
6歳の息子は6歳の女の子が好きなものが好き。バービー、ディズニープリンセス、キラキラしたもの、メリージェーン[ストラップシューズ]、『モンスターハイ』の人形、ダンス教室、そしてピンク。溢れんばかりのピンク。
ローリーさんの息子C.J.君は外の世界では男の子として振舞っていますが、学校から帰るなりピンクのスカート、ピンクの靴下、レースのタンクトップに着替え、ローリーさんのファッションチェックをしたり一緒にマニキュアを塗ったりします。

C.J.君が女の子向けのものに興味を持ち始めたのは2歳半頃。ローリーさんのバービーとの出会いがきっかけでした。魔法にかかったように夢中になり、飽きるどころか女の子向けのものばかり欲しがるようになります。
おたんじょう会のテーマはディズニープリンセス、ハロウィンの仮装には白雪姫。明らかに「普通の男の子」の枠にはまらない息子に戸惑います。でも、女の子のおもちゃや服を手にする息子のなんと幸せそうなことか。

ローリーさんはどうしたらいいか分からずインターネットに向かいます。しかし、悩みに答えてくれるような情報は全く見つかりません。そこで、自分のような親のため、自ら情報源になろうとブログを始めます。
ブログの開設にあたってはゲイの兄弟の影響も大きかったようです。自分自身を表現することを許されずに苦しむ兄弟を目の当たりにしてきたローリーさん。親になった今、息子が自分自身を誇りに思えるよう育てていこうと誓います。

そうは言っても保守的な地域に暮らしていると、いつも上手くはいきません。C.J.君がスカート姿で遊んだりバレエ教室で踊ったりしているのが目撃されると噂話が始まりました。また、上の息子はいじめのターゲットにされたこともあります。
そんな格好をさせたらいじめられる、と言われます。なぜ息子が自分らしくいるだけで罰を受けなければならないのか分かりません。焦点を合わせるべきは息子を変えることではなく、いじめ加害者の行いを変えることではないでしょうか。
リトルリーグで活躍する少女と、ダンス教室で踊るチュチュ姿の少年に向けられる視線がなぜこうも違うのか。外見に目を奪われて人間性を見過ごしてしまうほど、ジェンダーのステレオタイプは強固なものです。しかし、どうすればいいのか、ローリーさんには良い答えが見つかりません。

ブログが人気を集めるようになると、173もの国から数多くのメールが届き、同じような境遇の親が世界中にいることを知ります。
LGBTQ(ウィキペディア)の当事者たちからは、自分を抑圧しなければならなかった幼少時代が語られ、ローリーさんの育児に自信を与えてくれます。
時折ヘイトメールも届きますが、自分たち夫婦が孤独ではないと知った安心感の方が大きいと言います。

C.J.君は成長するうちに自信を身につけ、自分で決断するようになってきました。ピンクの服に身を包む価値がないと判断したら自分を「編集」することもあります。
大きくなったら女の子になりたいと繰り返し言っていますが、将来どのような人になろうと、夫婦の子供への愛は変わらないと言います。
息子はトランスジェンダーであるというのがどういうことか、年相応に知っています。私たち夫婦もその可能性を常に考えています。私はいつも息子に、あなたには家族の揺るぎないサポートと愛があるとはっきり伝えています。私の役目は子供を変えることではなく、愛することです。

《関連資料》
「性別不合」の子どもとは? |NPO法人 LGBTの家族と友人をつなぐ会
Q. 2歳3か月の男児。女の子のように振る舞い、性同一性障害ではないかと不安です。 (2009.12) |赤ちゃん&子育てインフォ
[文献]子どもの性同一性障害を考える |Anno Job Log

《ブログ内関連記事》
[体験談]スカートをはく息子と「男らしい」父親の役目
↑C.J.君のお父さんのエッセイ。
[体験談]息子はスカートもメイクも好き。でもトランスジェンダーではありません
↑2016年に書かれたローリーさんのブログから。
うちの子、性同一性障害?と思ったら