2020年2月14日金曜日

[Q&A]パンセクシュアルの12歳の娘をどう支えたらいいですか?

文字画像「Q&A」
性的マイノリティの子供を持つ親の相談で時々見かけるのが、「子供がゲイなのは何の問題もないんだけど、親として何をしたらいいの?」といった質問です。
今回は、アメリカの育児サイト「Your Teen for Parents」の相談コーナーから、12歳の娘を持つ40代の父親の相談を紹介します。
Ask The Expert: When Teens Explore Sexual Identity | Your Teen for Parents (2016)

相談

12歳の娘が通う学校のスクール・カウンセラーから電話があり、娘がこの2カ月ほど「重度の不安」とうつ状態を経験していると言われました。
娘と何度か話し合った後、女の子とデートしたことを話してくれました。現在は男の子とデートしています。娘は自分がパンセクシュアル[*]だと考えていると説明してくれました。そして不安とうつは、私と妻に話すことへの恐怖から来ているとのことです。
娘のことは無条件に愛しています。何があろうと娘の味方です。パンセクシュアルについては理解して娘の役に立てるよう勉強中です。どうすれば娘が気楽に何でも話してくれるようになるか、アイデアやヒントをください。

もうひとつはもっと概念的な質問です。
娘はデートしたのは女の子1人と男の子1人だけだと言いました。私の質問は、娘がまだ12歳で人生経験があまりないということです。女友達との感情的なつながりを、ロマンティックな、あるいは性的な魅力だと勘違いしている可能性はありますか?
矮小化や非難をしているわけではありません。私も12歳になる前には女の子に惹かれるのを自覚していましたから、娘が誰かに惹かれていることを疑ってはいません。娘がパンセクシュアルだというなら、できる限りのことを理解したいだけなのです。どんな情報もありがたいです。

* パンセクシュアル(pansexual)...人を好きになるうえで相手の性別は重要ではないという性のあり方。パンセクシュアルのパンは「全て」という意味。
似た言葉にバイセクシュアルがある。バイは「ふたつの」という意味(ここでは男女)だが、「性別は男女のふたつだけではない」「そもそも性別に惹かれるわけではない」と考える人のなかには、この「バイ」に抵抗を感じてパンセクシュアルという呼び方を選ぶ人がいる(抵抗を感じずバイセクシュアルを選ぶ人もいる)。そのほか、各自がさまざまな理由で自分をより的確に表していると感じられる言葉を使っている。
《参考》バイセクシャルとパンセクシャルの違いは何か?困惑するLGBTQコミュニティ|Rolling Stone Japan (2018)

回答

回答者は、臨床心理士のマシュー・ラウス (PhD, MSW) さんです。
マシューさんいわく、親という役割に完成形はなく、大切なのは自問を繰り返し、変わり続ける状況に順応する意欲を持つことなのだそうです。そのため、この父親がこうしてアドバイスを求めること自体が親としての意欲の表れだと称賛しています。
マシューさんのアドバイスは以下の3つです。

1. 私たちの文化でカミングアウトするのはまだまだ難しい
お嬢さんが父親に性的アイデンティティの話をしたがらなかったことで、このお父さんは親として少し罪悪感を感じているようです。しかし、このお父さんは非常にオープンでコミュニケーションがとれているようです。ですから、お嬢さんの不安は父親とはあまり関係がなく、それよりも社会のなかの性的アイデンティティに関するメッセージと関係があると思います。
社会のなかには標準と異なる性のあり方に関する否定的なメッセージが日常的にあります。メディアでの否定的な描写。映画やスポーツ、政治などの場での多様性の欠如。そして社会に浸透している異性愛の前提などです。こうしたメッセージは多くの人が無意識のうちに受け取っていて、想像以上に強固なものだとマシューさんは指摘します。
こうしたことはすべて、異性愛以外の性的アイデンティティは恥ずべきものであるというメッセージを伝えます。親がどれほど子供を受け入れ、支えていても打ち勝つのが大変なほどです。つまり、親がコントロールできる範囲を越えてしまっているので、ご自身を責めないでくださいということです。

2. あなたの10代の子供はまだ話したがらないかもしれない

マシューさんはこの父親に、ほんの少しだけ注意しておきたいことがあると言います。それは、子供が安心できる親子関係を築けたとしても、それで10代の子が何でも話してくれるとは限らないということです。
10代の若者は成長するに従い、サポートやアドバイスを求める相手として友人をどんどん頼るようになり、親にはますます頼らなくなっていきます。これは全く正常なことです。
コミュニケーションの扉は開きつつも、無理強いや詮索をしたくなる衝動には抵抗してください。そのようなことをしても、あなたの意図とは逆の効果しか生みません。

3. 批判的でない受容がベスト

子供から性的アイデンティティに関して何か告げられた時の最善のアプローチは、批判的にならず、不確実さも含めて受け入れることだとマシューさんは言います。
確かに12歳では、ロマンティックな魅力と友情の魅力との複雑さは理解できないかもしれません。生涯ずっと自分をパンセクシュアルだと見なすわけではないかもしれません。しかし、これはお嬢さんの自己発見の旅なのであって、他の誰かが指図するようなものではないのです。「本当にパンセクシュアルなの?」「まだ性的なこともしてないのにどうして分かるの?」といった質問をしたくなるかもしれませんが、そうした質問はかすかな非難として伝わります。
性的アイデンティティの発達についてどのように話したいかは本人に主導権を握らせ、子供をまっすぐ[ストレート]に矯正しようとする(ダジャレですよ)いかなる衝動も抑えましょう。

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