2020年1月17日金曜日

中国と台湾の春節広告に今年も同性カップルが登場しています

「福」の文字画像
今回は中国と台湾の春節向け広告をふたつ紹介します(+α)
まずは中国の大企業アリババ・グループが有する通販サイト「天猫 (Tmall)」です。1月2日に公開された春節セールの広告に同性カップルとみられる人物が登場しました。これはSNSで瞬く間に拡散し、評判もよかったようです。

下は香港の英字新聞「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」の動画記事で、この広告が中国で話題だと伝えています。CM本編も英語字幕付きで見られます。


天猫の春節セール

内容を説明します。
帰省シーズンである春節に息子が男性を連れて帰ってきます。いぶかしがる両親。それを見た女性二人は「今夜は面白くなりそうだよ」というような意味のことを言っているようです(後述)
食事の席で父親が「遠慮せず自分の家だと思いなさい」と男性に声をかけると、男性は「ありがとう、パパ」と答え、場が凍りつくというオチです。

これ、広告としては「種やナッツ類がセール中ですよ」という内容です(上の動画では最後の広告部分がカットされている)
二人の女性が会話のなかで「吃瓜」というスラングを使っていて、これが「おやつ用の種を食べる=野次馬見物をする」という意味になるようです(その表現を知らないおばあちゃんが本物の種を勧めてくる)。上の動画の英語字幕では「ポップコーンを食べながらショーを見よう」というような翻訳になっています。それで「ありがとう、パパ」の後に、ショーが始まったとばかりに女性がヒマワリの種の袋を取り出すわけです。

この広告は6編からなるシリーズのひとつで、さまざまな家庭の光景のひとつとして描かれています。全編を通して見ると(*1)、若者言葉が親に通じずコミカルな状況が生まれたり、伝統的な服が今の若者には逆におしゃれだったり、ジェネレーション・ギャップや世代間のつながりがテーマとなっているようです。
*1 天猫年货节广告|腾讯视频

英語圏のメディアも取り上げています。
Alibaba praised by China's gay community for ad recognizing same-sex couples | Reuters
Same-sex relationships are taboo in China. An Alibaba ad is challenging that | CNN
Does China’s response to LGBT couple in Tmall advert signal acceptance? | South China Morning Post

英語圏の記事が「検閲の厳しい中国では珍しい」という書き方をするのはまだわかりますが、なぜか中国国内のメディアも「中国において主要な広告に同性愛と見られるストーリーが登場するのは今回が初めてだ」(*2) と報じているようです。
*2 【動画】中国で初めて大手企業CMに同性カップルが登場?ネットユーザーの感想は…|レコードチャイナ

「主要な広告」の定義はわかりませんが、中国で同性カップルやレインボーフラッグのような表現が出てくる広告は割とあって、表現も洗練されていると感じます(ただし、男性カップルに偏っているかもしれません)。

例えば、スマートフォンの会社Vivoの2017年の春節広告があります。天猫の広告と同じように色々な家族の春節の様子が描かれています。
天猫の広告の男性二人は終始リラックスしていますが(そのせいか友達同士のようにも見える)、この二人は緊張しながらカミングアウトのタイミングを見計らっています(1分50秒頃から)
中国・スマホ会社Vivoの春節CMに同性カップルが登場(当ブログ)


もうひとつ、配車サービスの滴滴(DiDi) が2017年に制作した広告です。「私たちはお客さんのプライバシーには立ち入りません」という内容で、さまざまな背景を持った乗客のなかに男性同士のカップルが登場します。
滴滴打车:不打扰一份真实的情感|bilibili

クリネックスで春節料理づくり

もうひとつは台湾から、9日頃に公開されたクリネックス(Kleenex)のペーパータオルの春節広告です。


こちらも連作で、5組の家族が「年菜」、日本でいうおせち料理を作るという内容です。
台湾の年菜も日本のおせちと同じように「家庭/家族」のイメージが強いようですが、この広告に登場する5組は、1)一人暮らしの娘とスマホ越しの母、2)娘の帰省を待つ老夫婦、3)男性カップル、4)大家族、5)おばあちゃんと孫、という多彩な構成になっています。
YouTubeでは同性カップル編に人気が集中しています。しかし、台湾からこうした広告が出てきてももう驚きはないのか、天猫の広告ほどには話題になっていないようです。
ちなみに、2人が作っているのは佛跳牆という高級スープ(の簡易版?)で、年菜には欠かせない一品だそうです。

おまけ

春節とも家族とも関係ありませんが、こちらも15日に公開されたばかりなので載せておきます。
中国最大の(世界的にも最大級の)ゲイ/バイ男性向けデートアプリ、Blued(*)のブランド・イメージ広告です。デートアプリながら性的なものではなく、社会派映画の予告編風の仕上がりになっています。
約3分。英語字幕付き。
* 余談ですがBluedの公式発音がよく分かりません。英語圏中心に「ブルード」と読む人が多いけれど、CEOの耿楽は「ブルーディー」と発音してます。



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