しかし、母親非難がある程度知られ、問題視されている一方で、dad-shaming(父親非難)が指摘されることはあまりないようです。
2019年にアメリカの「Mott Poll」という調査がこの父親非難について調査しました。
Mott Pollというのは、米ミシガン大学付属C.S.モット小児病院が実施している「子供の健康に関する全米世論調査」だそうです。
調査対象は0歳から13歳の子供を育てたことのある18歳以上の父親で、報告書は713人の回答に基づいています。
下記の「推論」部分も報告書に書かれたものを一部要約したものです。
Parenting put-downs: How criticism impacts fathers | National Poll on Children's Health
報告
父親の約半数(52%)は子育てのスタイルや選択を批判されたことがあると答えた。誰から批判されたか
- 子供のもう一方の親(44%)
- 子供の祖父母(24%)
- 自分の友人(9%)
- 公共の場やオンラインでの見知らぬ人(10%)
- 教師や医療提供者など子供とかかわる専門家(5%)
推論:もう一人の親(母親)からの批判が多い
これは歴史的な性役割を反映している可能性がある。母親が生まれながらの介護者とみなされる一方で、父親は育児能力に限界があり、監督や矯正が必要だとみなされている。夫婦間での批判は、育児スタイルのわずかな違いも、“ベストな育児”の座を巡る対立となる可能性がある。
批判されたと答えた父親のうち、批判の内容は
- 子供のしつけ(67%)
- 子供に与える食べもの(43%)
- 子供の扱いが荒い(32%)
- 子供に注意を払わない(32%)
- 子供の睡眠(24%)
- 子供の外見、身なり(23%)
- 子供の安全(19%)
推論:しつけに対する批判が多い
子供が悪さをした時にどう対処するかは子育てのなかでも難しいもので、夫婦間で意見が食い違いやすく、すり合わせるのも難しい。それは子供へ矛盾したメッセージを送ることになり、夫婦同士で批判し合う結果となる。推論:子供の扱いが荒い/注意を払わない
これは父親と母親の育児スタイルの違いから来ている可能性がある。一般的に父親は体を使った遊びをすることが多い。母親や周囲の大人に「子供に怪我をさせてはいけない」「子供から目を離してはいけない」という期待があり、父親がその期待に応えていないと判断されると、批判が起きる。
批判に対する対応や反応
- 子供との関わり方に変更を加える(49%)
- 批判されている点について情報やアドバイスを探す(40%)
- 親としての自信がなくなる(28%)
- 親としての関わりを減らしたくなる(19%)
- 自分の子育てに対する批判はしばし、または常に、不公平だと感じる(43%)
推論:批判を前向きに受け止める父親が多い
批判を受け止めて行動を変えるというのは、父親に経験や知識が不足していた場合には最高の結末かもしれない。情報やアドバイスを探したという父親も多い。新しい情報は子育ての変化を促す場合もあれば、逆に父親のアプローチの確かさを裏付ける場合もある。 母親や家族は、自分と育児スタイルが違うからといって間違いとも有害とも限らないと認める必要がある。
推論:親としての自信をなくす
あまりにも多くの批判は親としてのやる気を奪う。これは父と子の両方にとって不幸だ。父親を批判したくなる人はこの潜在的な結果に警戒すべきだ。父親が感じる不信感
父親の90%が、ほとんどの父親は上手に子供の世話をしている、と感じている。一部の父親は周囲の人から信用されていないと感じたことがある。
- 自分の子供の要求や言動に詳しくないと教師から思われている、と感じたことがある(11%)
- 自分の子供の健康状態に詳しくないと医師や看護師から思われている、と感じたことがある(12%)
- 自分の子供の活動に関するコミュニケーションから除け者にされていると感じたことがある(23%)
推論:専門家からの軽視/のけ者扱い
こうした見えづらい形の軽視は、父親の自信を低下させたり、「子供の幸せにとって父親はたいして重要でない」というメッセージとなる可能性がある。子供とかかわる専門家は父親への否定的な思い込みを避けるべきだ。《関連》
Mott Pollは2017年に母親に対しても同様の調査をしています。
・【調査】母親の育児への批判と、批判が母親に与える影響(当ブログ)
・Mom shaming or constructive criticism? Perspectives of mothers | National Poll on Children's Health