2019年6月7日金曜日

シンガポール|HIV+の息子を持つ母親が語る受容の大切さ

レッドリボンの画像
2019年1月、シンガポールでHIV陽性者の個人情報リストが盗まれ、ネット上に流出するという事件がありました[*]
このニュースの翌日(1月29日)、シンガポールの女性がフェイスブックに文章を投稿しました。そこにはHIV+の息子を持つ母親としての思いがつづられていました。
* HIV感染者1万4200人の個人情報漏えい、シンガポール|AFPBB News


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文章を投稿したのはダイアナ・ゴー(Diana Goh)さん。息子のエイヴィン・タン(Avin Tan)はゲイでHIV/AIDS活動家です。
ダイアナさんはこの投稿でHIVと共に生きる人々を受容する大切さを語っています。
HIVは免疫システムにダメージを与えるウイルスに過ぎず、死刑宣告ではありません。彼はまだほんの子供――私の子供――で、HIV陽性という健康状態にあります。彼には私のサポートと励ましが必要です。彼のようにHIVと共に生きる人には周囲の人々のサポートと愛情が必要です。拒絶される恐怖があると、多くの人が、検査を受けたり必要に応じた治療を求めたりすることを思いとどまってしまうかもしれません。そのことがさらなるHIVの拡大につながるかもしれません――ささいなことではないのです。HIVと共に生きる人々は、家族や友人、社会からの愛情を受けられれば、幸せで健康な人生を送り続けることができるのです。

息子のエイヴィンは2009年にHIV検査で陽性と判明しました。しかし、親を傷つけること、親から拒絶されることを恐れ、打ち明けたのは2012年になってからでした。
意外にも、私はとてもほっとしました。悪いニュースを聞いたにもかかわらずです。ある意味で、息子は私を信じることを選んだからこそ、HIV感染のことを話したのです。
親というのは、子供がよりよい人生を送れるよう、進むべき道に戻れるよう、我が子を助け支える最も重要な人物です。私たちは子供に孤独や恥を感じてほしくはありません。誰しもあるがままを受け入れられたいものなのです。

エイヴィンは2014年に地元の新聞に載り、シンガポールで2番目にHIV+だと公表した数少ない活動家として、様々なメディアに登場するようになっていきます。
彼がこうした強さを持てるようになったのも、家族から受け入れられているという安心感があればこそだと、ダイアナさんは信じています。
受容――抵抗するよりも受け入れること。コントロールできないことを変えようと奮闘するよりも、起きたことを受け入れるほうが、人はより幸せに、より安らげるようになります。私たちの心の平穏と幸せを維持できるようになります。受容は人の命を救うのです。

こちらの記事によると、今回投稿された文章は、お蔵入りとなった去年のインタビューの一部だそうです。
Mother of HIV-positive Singaporean man shares touching perspective of love and acceptance | The Pride

《参考》
Avin Tan | The Singapore LGBT encyclopaedia Wiki

シンガポールの代表的なLGBTイベント「ピンク・ドット」のステージに親子で上がった時の動画(話すのはエイヴィンさんのみ)。英語音声(2015年)

《関連》
Living with HIV::身近な人からHIV陽性と伝えられたあなたへ
もめんの会(母親を中心とした親の会)|ぷれいす東京

HIV/エイズ よくある質問・みんなの回答集|ぷれいす東京
パートナー/家族がHIV陽性だということを自分の身近な人にも話すことができません。自分ひとりでかかえていかなければならないのでしょうか?
先日、本人からHIV+と打ち明けられましたが、私はどうすればよいのでしょうか
本人の体調がおもわしくないとき、どう接したらいいのか戸惑ってしまいます

《余談》
エイヴィン・タン(Avin Tan)の仲間で、同じくHIV+の活動家にカルヴィン・タン(Calvin Tan)という人もいます。似た名前ですが別人ですので検索する際はご注意ください。