自然志向や自己啓発がテーマ(?)のウェブマガジン「Elephant Journal」の記事を紹介します。アメリカのライター、レネー・デュボー(Renee Dubeau)さんが、ゲイの夫との離婚を乗り越えた一人として、同じ境遇の人に向けていくつかアドバイスをしています。
Things I Want You to Know When Your Husband Comes Out of the Closet.| Elephant Journal (2016)
レネーさんが元夫からカミングアウトされて約4年(記事掲載時)、自分の経験を話してみると、同じような人を知ってるという声が聞こえてくるようになりました。ある女性は結婚生活がうまくいかないのは自分のせいだと感じていたそうです。結婚生活に問題を感じながらも原因が分からない、配偶者が同性愛者だとは知らない、そういう状況で自分を責めたのはレネーさんも同じでした。
レネーさんからの最初のアドバイスは「あなたはおかしくない」です。
あなたがこれまで感じてきた、パートナーと通じ合っていない、求められていない、何かがおかしいという感覚は、間違っていない。私の最大の後悔は結局のところ、自分の直感を信じなかったことだ。
私の気持ちをパートナーに話そうとすると、彼はたいてい言い逃れをした。 2人の関係への不満を口にすると、忙しい、子供がいる、仕事のストレス、など、思ったようにはできない論理的な理由を並べ立てた。こうした会話で私がしつこくしようものなら、たいてい最後は、うまくいかないのは全て私のせいだという気持ちになって終わった。私の期待が非現実的なのだ。私が神経質すぎるのだ。あるいは私がただの欲張りで、私を満足させられる男などいないのだ。
最後には自分の頭がおかしくなったように感じたそうです。自分の気持ちがことごとく否定されるうち、自分に見えている問題は妄想で、本当に問題があるのは自分自身なのだと信じるようになってしまったのです。
このように、異性愛配偶者が自分を責めたり、周囲から責められたりすることは珍しくないようです。でも実際は「あなたのせいじゃない」。これが二つ目のアドバイスです。
もう終わったことだ。戻ることも変えることもできない。それに、物事というのはその時は訳が分からず、後になってつじつまが合うようになるものだ。サインに気づかなかった、サインを無視したと自分を責めないでほしい。全てのことには理由があり、完璧なタイミングで訪れるものだと信じよう。あなたは最善を尽くしたのだし、できることと言えばそれだけなのだ。壊れたものを直す責任はあなたにはなかった。あなたのせいではなかったのだ。
三つ目のアドバイスは「パートナーのせいでもない」ということ。
レネーさんの元夫が親友だった自分と結婚したのは「完璧に理にかなっている」と言います。
私たちは同性愛者が身近にいない場所で育った。そこでは同性愛者であってはいけなかった。ありのままの自分でいられず、自分の願望すら自由に表現できないなら、残された唯一の選択肢は、自分が考えるあるべき姿になることだけだ。元夫が目指した「あるべき姿」は、理想的なアメリカ人家庭を築くことでした。
私たちはアメリカン・ドリームを追いかけていた。そしてどこから見ても実現できていた。クルドサック[*]に建つ、ピケット・フェンスに囲まれた大きな家。素敵な車が数台。2人の子供。小さな犬たち。社交的で地域とも交わり、物質的にも恵まれていた。* クルドサック...高級住宅地に多い円形の袋小路。
経済的に妻を養うことが愛情だと考えていた元夫。でも彼はそういう生き方しか知らなかったのだ、とレネーさんは擁護します。というのも、自分もまた結婚する生き方しか知らなかったと気づいたからです。
私は彼が自分自身を知らなかったことを責められない。本当の自分でいられるほどに自分自身を愛せなかったことを責められない。私もそうだったからだ。彼が私を傷つけようとして結婚したのではないのは分かっている。彼にとっては悪意のある行為ではなかった。彼はただ、自分がなるべきだと思う男になろうとしただけなのだ。
レネーさんが最初からこういうふうに考えられたわけではありません。時間をかけて自分の感情と向き合ってきました。喪失から回復に至る段階は、まるで夫の死を悼むような経験だったそうです。同じような状況にある人にも、あらゆる感情を受け止め、そうした感情がどこから来るのか突き止めてほしいと言います。
裏切られたという気持ち、嘘をつかれ騙されたという気持ち、自分自身への怒り、見捨てられたという気持ち、それらはどれも完璧に正常な感情だ。自分の感情に人生を乗っ取らせてはだめだが、乗り越えるために必要な手間ひまをかけてやれば、それらを解き放てるようになる。
予想以上に時間がかかっても驚くことはない。乗り越えるまでにはいくつもの段階があるのだ。あなたは学び、成長し、変化していく。うまくいけば一段落した時には、思いもよらない形で自分を愛せるようになるはずだ。
最後のアドバイスは「自分の経験から贈り物を見つけよう」です。
結婚生活は後悔ばかりでもありませんでした。愛する2人の子供は元夫なしには存在していないし、普段の暮らしも笑いに満ちていたし、夫からの愛情も嘘ではなかったと確信しています。レネーさんはそうした幸せな時間を記憶にとどめ、それ以外は忘れようと努めています。
私自身の経験から見つけた最大の贈り物は、自分自身への深い愛情だ。私は時間をかけて、自分の心と、自分がこの結婚に持ち込んだものをしっかりと見つめた。そこで見つけたのは自分の中の怯えた少女だった。彼女は愛に似た何かを見つけるためなら何だってしただろう。彼女は愛されたことがなかったのだ。
彼女は自分の愛し方を知らなかった。この大きくて恐ろしい世界で、隣にいる彼なしではやっていけないと思っていた。
一度、怯えた少女の愛し方を学び、彼女に必要なあらゆる安心と励ましの与え方を学ぶと、私はこれまでで最も健康的で、幸せで、本物のバージョンの私になった。今はもう、完全な自分でいるために自分以外からの証明や愛は必要ないと知っている。こうしたものはまず自分の内側から来るべきなのだ。
あなたが置かれている状況に特有の苦しみがどんなものであれ、あなたとパートナーが穏やかな解決にたどり着けるよう願っている。私たちも子供たちに地獄のような思いをさせないよう本当に頑張ったのだ。
私たちはお互いを支え合う努力もしたし、結婚を終えた今も友情を育み続けている。少しの寛大さと思いやりを持つことで、この時期は人生のなかでも非常に力強い個人的成長の時期となり得る。包容しよう、容認しよう、物事は日に日に良くなっていくのだと知ろう。できるなら、今回のことをただ結婚の終わりと見なすのではなく、2人の関係を再定義する機会だと思ってみてほしい。
《関連リンク》
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