2016年7月23日土曜日

フロリダ銃乱射事件 遺族や生存者の抱える困難

アメリカ国旗の画像
米フロリダ州オーランドで6月12日未明に銃乱射事件が起きました。犠牲者の多くがヒスパニック系の同性愛/両性愛者だと思われますが、そのことが遺族へのサポートを困難にする可能性があるそうです。いろいろな記事から断片的に抜き出してみました。

犠牲者たちの葬儀

亡くなった方の1人、ブレンダさんは11人の子供の母親で、事件当日はゲイの息子やめいたちとクラブに来ていました。(子供たちは助かった)
His mother died for him in the Orlando shooting. Here's his tearful tribute. |CNN

ともに亡くなったあるカップルは生前からお互いの家族に受け入れられており、遺族によって合同で葬儀が行われるという報道もありました。(実際には別々に行われた)
Gay couple killed in Orlando did not have a joint funeral |LGBTQ Nation

こちらのカップルの葬儀は合同で行われました。
Families of Orlando Victims Find Acceptance in Tragedy |The New York Times

ある父親は亡くなった息子がゲイだったことを恥じて遺体の引き取りを拒否しました。(その後、親戚に引き取られ埋葬された)
Father Refused to Claim Pulse Nightclub Shooting Victim |Orlando Latino


事件が暴露する家族の性的指向

事件の直後から、遺族へのサポートの難しさを予測する記事が出ていました。
'For a lot of our families, having a son or a daughter who is gay maybe was a secret until this weekend' |PRI.org (6月13日)

フロリダ州はラテン系移民とその子孫が多い地域で、事件現場となったクラブ「パルス」でも当日は「ラテン・ナイト」が開催されており、亡くなった人の多くもラテン系の名前を持つ20代の男性でした。
ラテン系アメリカ人は信仰心にあつく家族のつながりが強いという特徴がある一方、それがカミングアウトのハードルにもなっているそうです。そのため、今回の事件で初めて子供の性的指向を知った遺族がいても不思議ではないといいます。

ラテン・コミュニティを支援する地元の非営利団体「Latino Leadership」のマリッツァ・サンズ(Marytza Sanz)さんによると、家族が受け入れていたとしても、近所や知り合い対しては「家族の秘密」だった可能性もあります。
「多くの家族が、娘や息子が同性愛者だということをこの週末までは秘密にしていたかもしれません。文化的に、我々のコミュニティの家族はあまりオープンではないので。それがある日突然、彼らの子供たちの名前がメディアで報じられだしたんです」

サンズさんは言葉の壁も指摘します。ラテン系の住民のなかには英語が苦手な人も多いようです。事件直後から支援の表明や寄付の受付が始まりましたが、サンズさんのオフィスを訪れる人の多くが、こうした支援にアクセスする方法を知らなかったり、支援の存在自体を知らないといいます。

また、通いなれた教会がこれまで同性愛者らを非難してきた場合は、そこは遺族にとって心のよりどころにはならなくなるかもしれません。
サンズさん「我々の家族たちは道を見失っています。方向もわからず走っている状態です」


教会での支援

もうひとつ、「ウォールストリート・ジャーナル」の記事では被害者たちを支援する教会の様子を伝えています。
Orlando Shooting Leaves Gay Survivors, Mourning Families Struggling With Secrets |The Wall Street Journal (6月17日)

同性愛者の会衆も多いというオーランドの教会「Christ Church Unity」のドン・バートン(Don Barton)さんによると、ヒスパニック・コミュニティにはマチズモ文化が残っているため、遺族にとって、子供の死と同性愛の両方と向き合うのは二重苦になるといいます。

犠牲者の一人、エンリケさんの遺族は今回の事件で彼の性的指向を初めて知りました。
エンリケさんのおばのナンシーさんがコメントしています。
「彼が秘密にしていたのは、家族が敬虔なクリスチャンで、母親を傷つけたくなかったからでしょう。彼には母親がどう感じるか分からなかったんです」
当の母親も取材に答え、言ってくれたらよかったと話しています。
「私たち家族に乗り越えられないことなどありませんから」


仲間による追悼の困難

地元の同性愛コミュニティでは本名を伏せて仮名を使う人が多く、犠牲者の名前が公表された後も、それが自分の友人なのかどうか分からないといった混乱も起きたそうです。
また、犠牲者のパートナーのなかには家族にも話せず、ひそかに追悼することしかできない人もいるといいます。

各所で行われた追悼集会ではメディアが集まったことでプライバシーの問題も発生しました。
オーランドの教会「Joy Metropolitan Community Church」のマリーナ・ロウズ(Marina Laws)さんは、追悼集会に集まった200人以上の人に対し、報道の映像に写りたくない人は部屋の後方に移動するよう呼びかけました。
「家族にカミングアウトしてない人もいますし、誰にも言っていない人もいます。彼らには教会も来づらい場所です。[ただでさえ悲嘆に暮れている時に]こんな形で暴露されるのはさらなるストレスです」


孤立する生存者

生存者のなかにも現場にいたことさえ家族に黙っている人がいます。
地元の教会「Christ Church Unity」で生存者を世話している牧師のシンシア・アリス・アンダーソン(Cynthia Alice Anderson)さんによると、彼らはカミングアウトしていないために、おぞましい体験をしながらも事件現場にいたことさえ人に話せず、『完全な孤立』を感じているといいます。

生存者の一人、ジェイソンさんは今まで両親にゲイだと言えませんでした。
あの日クラブにいて友人を2人亡くすという経験をしましたが、それでもあの場にいたことを親に言うつもりはなかったそうです。しかし、クラブの外で報道のカメラに写り込んでしまい、それを親に見られてしまいました。親は電話で無事だったことを喜びながらも、なぜゲイバーにいたのか質問してきました。気まずい会話の中、しぶしぶゲイだと認めたそうです。
現在は、もう秘密ではないことにかすかに安堵も覚えているものの、次に家族と会うことに不安を感じていると語っています。