2016年4月11日月曜日

アメリカ・LGBTQの子供を拒絶する親も解決策の一部である

アメリカ国旗の画像
これまで多くの研究が、若いLGBTQ(ウィキペディア)の心身の健康と、家族のサポートとの関連を指摘してきました。

Anti-Gay Parents Still Love Their LGBTQ Kids | slate (2016)
この記事のなかから「子供を拒絶する親も解決策の一部だ」という部分だけごく簡単に取り上げます。

記事を書いているナサニエル・フランク(Nathaniel Frank)は、ニューヨークにあるコロンビア・ロー・スクールで「What We Know Project」という調査チームのディレクターを務めています。彼らはLGBTQの若者と家族に関する研究についてレビューを行い、発表しました。
レビューの対象となったのは、家族のサポートとLGBTQの若者の心身の健康に関連を見いだした、42本の査読を経た研究です。結果、以前から言われていた家族のサポートの重要性があらためて確認されたそうです。

・家族の受容がLGBTQの若者の健康リスク(自殺傾向、うつ、不安、薬物の乱用、性感染症など)を低下させる。
・子供の性のあり方を知らずに子供を支える親よりも、知った上で支援する親の方がよりポジティブな違いをもたらす。
・仲間の支援トよりも親の支援の方が重要。

しかし、家族から拒絶されることも多いアメリカのLGBTQの人々は、家の外に強固なネットワークを築き、若者を守ろうとしてきました。そこでは家族は解決策ではなく、むしろ障害とみなされがちだといいます。

サンフランシスコ州立大学でこのテーマの研究を行っている「Family Acceptance Project」のディレクター、ケイトリン・ライアン(Caitlin Ryan)は、反同性愛的な家族も子供を愛していることに変わりはなく、彼らも可能なかぎり解決策の一部とみなすべきだと言います。
「子供を受け入れる親も拒絶する親のどちらもLGBTの子供を愛していて、自分たちの対応が子供の助けになっていると考えていました。」

子供の性のあり方を受け入れない親は、子供を押し留めたり"修正"したりすることで、子供がよりリスクの少ない人生を送れると信じています。ですから、そうした行為が実際には子供のためになっていないと知るとショックを受けるそうです。
それでも、信頼のおける情報源から批判的ではない文脈で情報を入手するだけで、そして、自分たちの拒絶的な態度が実際には子供たちの損害のリスクを減らすどころかむしろ増幅させていると学ぶだけで、損害を減らす取り組みができるようになった。

重要なのは、損害の少ない態度をとるうえで、親自身が大切にしている信仰や価値観を放棄する必要はないということだ。
たとえば、同性愛は間違いだという信念を持ちながらも、子供のLGBTQの友人を家に招き入れたり、同性愛を理由に子供が攻撃されたときに守ること。フランク氏は、その両立は難しいだろうが可能だと書いています。これは「モラルと価値観」の問題ではなく「健康と福祉(wellbeing)」の問題なのだと理解してもらうことが重要なようです。

子供が自分の性のあり方を受け入れ家族にカミングアウトする年齢は低下してきているそうです。その分、実家で親と過ごす時間は長くなりますから、家族を含めたサポートがますます重要になってきます。
LGBTQの若者に影響を及ぼす仕事や活動をしている人たちは、解決策の一部として家族に働きかけるべきだし、家族もそうした動きに応じるべきだと記事は指摘しています。

《資料》
What does the scholarly research say about the link between family acceptance and LGBT youth wellbeing? |What We Know Blog