2015年9月6日日曜日

性的少数者の兄弟姉妹にもサポートが必要

抱き合う親子のイメージ画像
Photo by Sarah Gadd
同性愛や両性愛、トランスジェンダーの子供を持つ親向けのアドバイスで何度か目にしたことがあるのが、「ほかの兄弟姉妹へのサポートも忘れないで」というものです。
3人の母親と心理療法士の文章から、兄弟姉妹に関する記述を、断片的ですが引用してみました。

兄弟姉妹もサポートを必要としている

2人の息子の母親であるローリー・デュロンさんは、女の子向けの服やおもちゃが大好きな次男の育児に試行錯誤してきました。
《参照》スカートをはく息子と母親の手探りの子育て(当ブログ)

それは4歳ほど年上の長男にも影響を及ぼしています。ローリーさんのブログ「Raising My Rainbow」を読むと、小学生の長男が同級生の同性愛嫌悪発言をたしなめたために相手からいじめられた、などのエピソードが出てきます。

ローリーさんは同じような立場の親へのアドバイスの中でこう書いています。
兄弟姉妹のことも忘れないでください。ダイアン・エーレンザフト[*1]が最近こんなことを言っていました。
「ジェンダー・ノンコンフォーミング[*2]の子供を世の中に送り出すには家族全体の力が必要だ。しかし、それが兄弟姉妹のやりたいことや時間を費やしたいことである必要はない。私たちは兄弟姉妹に快適な領域から踏み出すよう求めたり、多くを求めすぎたりしてはいないだろうか?」
彼らには彼らの不安や混乱、傷つきやすさがあります。兄弟姉妹も共感やサポートを必要としているのです。
My Advice For Raising A Gender Creative Son |Raising My Rainbow (2014)
*1. ダイアン・エーレンザフト(Diane Ehrensaft)...子供のジェンダー問題に詳しい臨床発達心理士
*2. ジェンダー・ノンコンフォーミング(gender nonconforming)...既存の男らしさや女らしさに従わない/合致しないこと。スカートをはきたがる男の子など。定着している訳語はないようです。

ちゃんと気にかけていると伝える

2人の息子の母親であるマーシャ・アイズミさんは、上の子供がトランスジェンダー男性だったのをきっかけに、性的少数者やその家族を支援する活動を行っています。
《参照》子供にカミングアウトされた日系人母の恥と誇り(当ブログ)

そうしたなか、控えめで繊細な弟が親や兄のことを本当はどう思っているのか、気になっていました。口数の少ない10代の男子とは会話らしい会話にならず苦労したようですが、それでもこうしたメッセージを伝え続けたといいます。
「これもはっきりさせておきたいんだけど、パパも私もお兄ちゃんの性別移行に集中しなきゃいけなかったし、今もいろいろあるけど、あなたのこともお兄ちゃんと同じくらい愛してるんだよ。」
"I Love My Transgender Brother" |The Huffington Post (2014)

それぞれのユニークさを祝う

アメリアさんは3人の息子の母親です。長男は幼い頃からゲイだと自認してきました。幼い弟たちも育てるなかで、全員の個性に光を当てるよう心がけています。
[長男がゲイだということを]祝福するにあたって、ほかの息子たちが疎外感を覚えてしまうことを心配しています。それを解決するために、息子たち一人一人の独自性をほめたたえるようにしています。次男は[ゲームの]『マインクラフト』が得意なことを。三男はオリジナルのダンス・ルーティンをつくりだすことを。
私たちは、ゲイであることは長男を素晴らしい人たらしめている要素のひとつにすぎない、というふうにしています。実際、彼は素晴らしい子ですから。息子たちはみんな、それぞれに素晴らしいんです。
Parent Advice: Sibling Differences |The Parent Project (2014)

幼い妹や弟にも隠さずにサポートするのが大切

ニュージャージー州ラトガース大学の准教授で心理療法士のマイケル・C・ラサラ(Michael C. LaSala Ph.D.)は、同性愛者の兄弟姉妹が抱く可能性のある不安や悩みとして次のようなものを挙げています。
Brothers and Sisters of Gays and Lesbians |Psychology Today (2011)

  • 兄弟姉妹が同性愛者であることを恥じてしまう気持ちにどう対処すればいいのか。
  • 仲間たちが口にする同性愛嫌悪発言などにどう対処すればいいのか。
  • 兄弟姉妹が同性愛者であることで自分が非難や嫌がらせを受けた時にどう対処すればいいのか。
  • 同性に魅かれたことがなくても「自分にも起こるのだろうか?」と自分の性的指向を疑う。

一方で親は、兄弟姉妹、特に幼い弟や妹を守るつもりで兄や姉の性的指向を秘密にする場合があるといいます。
  • 弟や妹の年齢ではまだ対処できないのではないか。
  • 弟や妹の年齢に見合わない性的な話になるのではないか。
  • 弟や妹が影響を受けて「ゲイになる」のではないか。

しかし、こうした懸念の解決方法として隠すことを選ぶのは、兄弟姉妹を家族から隔離してしまう結果になると言います。
また、内緒にするつもりはなくても、カミングアウトのショックや、問題解決に集中するあまり、兄弟姉妹のことまで気がまわらないという場合もあるようです。
なぜ家族がバタバタしているのかわからないほうが、より混乱し、孤立し、苦しむ可能性がある。[秘密にするのが意図的であれ結果的であれ、]どちらの場合も兄弟姉妹の気持ちをサポートする人は残されていない。

ラサラ氏によると、同性愛者が身近にいるために周囲の子供が影響を受け同性愛者になる、という発想に科学的根拠はないそうです。また、同性愛を性的な話題ととらえて遠ざけるのではなく、年齢に合った説明をするほうがいいと言います。
核心をつくような性的な詳細に触れることなく、小さな子に同性愛を説明する方法はいくつもある。
「メアリーは大人になったら男の人とではなく女の人と結婚したいんだって。」
「ジョニーが女の子より男の子とデートしたいって言うから、ママとパパはびっくりしちゃったんだよ。」

まだ偏見に凝り固まっていない幼い子供というのは、その子の認識能力に合った説明を受ければ、同性愛のような話題も驚くほど柔軟に理解するものなのだそうです。