そのなかから3つの話題を簡単に紹介します。
『三匹の子ぶた』は男の子向け?女の子向け?
イギリスにある老舗出版社レディバード・ブックスは、自社の児童書から「男の子向け」「女の子向け」の表記を削除すると発表しました。Ladybird drops branding books ‘for boys’ or ‘for girls’ |The Guardian
レディバード・ブックスには性別で分けられた児童書が6冊あり、そのうちの2冊が2011年に発売された童話集、『Favourite Fairy Tales for Girls(女の子が大好きなおとぎ話)』と『Favourite Stories for Boys(男の子が大好きな物語)』です。
女の子向けの本には『シンデレラ』『ヘンゼルとグレーテル』『みにくいアヒルの子』などが、男の子向けには『ジャックと豆の木』『三匹の子ぶた』『ハーメルンの笛吹き男』などが収録されています。
イギリスではLet Toys Be Toysというグループが、子供たちの好奇心を制限するような無用な性区分を設けないよう、出版社に呼びかけています。
ニール・ゲイマンやジョアン・ハリスなどの作家もこれを支持しているほか、複数の出版社や文房具メーカーも賛同しています。
本を男女別に分けると、プレゼントを選ぶ大人(祖父母など)にとって分かりやすい、検索にかかりやすいなど、商業的な利点はあるそうです。しかし、レディバード・ブックスはキャンペーンの主導者たちと話し合い、今回の決定を下しました。
また、親会社であるペンギン・ランダムハウス社の児童書部門もこの立場を採用すると発表しています。
小売店も性別を強調している
最近、ネット上で話題になった写真があります。スパイダーマンやアイアンマンが描かれた目覚まし時計の店内広告を不愉快そうに指差す7歳の少女の写真です。彼女が指し示す店内広告には「男の子向けギフト」と書かれています。
This Little Girl Just Schooled Tesco Over A Sexist Sign Because "Anybody Can Like Superheroes" |BuzzFeed(写真あり)
これは、イギリスのカレンさんが娘を撮影したもので、写真がツイッターに登場すると1万回以上リツイートされ、BBCやThe Telegraphなど多くのメディアが報じました。店内広告もすぐに撤去されたようです。
後日、カレンさんはBuzzFeedのインタビュー(上記リンク)や自身のブログで事の顛末を語っています。
それによると、娘はスーパーヒーローや『ドクター・フー』も好きだし、お姫様や『アナと雪の女王』も好きな女の子。ところが去年、学校の友達から、おもちゃには男の子向けと女の子向けがあると言われました。
その話を聞いたカレンさんは、「それは違うよ。そのおもちゃで遊ぶと楽しいだろうなと思えば、誰が遊んだっていいんだよ。みんな、自分が好きになりたいものを好きになっていいんだよ」と答えました。
その会話を覚えていた娘は、店内広告を見て「バカみたい」と怒ったわけです。
カレンさんはその表情が可愛かったので写真に収め、友人たちに見せようとフェイスブックに投稿しました。
カレンさんにとっては何気ない日常の一コマでしたが、転載されて思いがけず大きな注目を集めたため、「些細なことで大騒ぎする面倒臭い親子」のような批判も受けたそうです。
しかし、反応のほとんどは共感で、「現状を内心不満に思ってる人が多いからこそ、これだけ拡散したのではないか」とカレンさんは分析しています。
また、「子供たちはこうした表示を大人のようには無視できない。ジェンダーの規範に従わない子をいじめるようなことが現実に起きている」と、このような売り方に懸念を示しています。
想像力に性別はない
同じ頃、掲示板サイトRedditに投稿された写真も話題を集めていました。70年代のレゴ(LEGO)に同梱されていた保護者向けのメッセージを写した写真で、そこにはこんなことが書かれています。おうちのかたへ
創造への衝動は、すべての子供たちに等しく強烈なものです。男の子でも女の子でも。
大切なのは技術ではなく想像力です。思い浮かぶものを何でも、好きなように作りましょう。ベッドでもトラックでも。ドールハウスでも宇宙船でも。
ドールハウスが好きな男の子はたくさんいます。宇宙船より人間味がありますから。宇宙船の方が好きな女の子はたくさんいます。ドールハウスよりもワクワクしますから。
何よりも重要なのは、子供たちの手に適切な素材を与え、かれらが心惹かれるものを自由に作らせることです。
These LEGO Instructions from 1974 Are Awesome (And Yes, They're Real) [UPDATED] |io9(写真あり)
投稿者の男性によると(リンク切れ *)、パートナーの曽祖母宅にあったレゴで甥や姪たちと遊んでいた時にこの小さな紙切れを発見し、40年前とは思えない現代的なメッセージに感銘を受けて投稿したそうです。
この写真もまたツイッターなどで拡散され、様々なメディアに取り上げられました。
* hlntv.com/article/2014/11/25/lego-letter-equality-1974
このメッセージは1974年に発売されたドールハウス・シリーズに封入されていたもので、同じ内容のドイツ語版も確認されています(レゴはデンマークの会社)。レゴ社によると、この理念は今も変わっていないとのことです。
《関連》
下記ハフポストの記事では、レゴの記事に加え、歴史あるおもちゃのジェンダー表現今昔を写真で比較していて興味深いです。
Letter From LEGO To Parents In The '70s Makes An Important Point About Gender |The Huffington Post
《参考リンク》
・有名デパートのHarrod’s、性別によるおもちゃ売場の区分を止める。|Rainbow Info (2012)
・性別に「中立」な玩具カタログ、スウェーデン |AFPBB News (2012)