2018年3月17日土曜日

[Q&A]うちの子が同性愛者かもしれません。私から聞いてもいいのでしょうか?

文字画像「Q&A」
英語圏のネット記事で時々見かけるのが、「うちの子はゲイかもしれない。本人に直接聞いてもいい?」という相談です。回答としては、「子供が深刻な状況にない限りはできるだけ聞かないほうがいい」というものが多いように思います。

アメリカの心理学系情報誌(?)『Psychology Today』からコラムをひとつ紹介します。
執筆者のウェスリー・デイヴィッドソン(Wesley C. Davidson)はLGBTテーマが専門のジャーナリストだそうで、『When Your Child Is Gay: What You Need to Know』(子供が同性愛者だった時あなたが知っておくべきこと)という本も出版しています。また彼女自身、成人したゲイの息子の母親でもあります。
Don't Ask, They'll Tell | Psychology Today (2017)

ウェスリーさんは息子が13歳の時にゲイだと気づいたそうです。子供部屋を掃除していた時にたまたま見つけた1枚のメモ。そこには息子の名前と他の男子の名前が絡み合うように書かれ、さらにハートで囲まれていました。しかし自分の思い込みかもしれないと思い、その時は何も聞きませんでした。
結果的には、息子は17歳になって家に彼氏を連れてくるまで自分からカミングアウトしなかった。13歳の時にゲイかどうか聞いていたら、おそらく彼は身構えて「違う!」と言っただろう。そして自分で否定したことになんとか折り合いをつけていかなくてはならなかったはずだ。あの時、自分自身に口止めしておいてよかった。
こうした経験もあり、親は先走らずに見守るべきだと考えています。
親は自分の子に性のラベルを貼り付ける立場にはない。子供のアイデンティティを無理に引き出そうとしないように。

本の共同執筆者で精神科医のジョナサン・トブケス(Jonathan L. Tobkes)によると、親へのカミングアウトは子供にとって精神的な負担が大きく、言い出すまでに時間がかかります。その一方で、親のなかには子供が話してくれないことに傷つく人もいるといいます。
「私は、子供が長い間カミングアウトしてくれなかったことに腹を立てている親たちと関わってきました。」とトブケスは語る。「一部の親は、子供のカミングアウトの遅れを親子の信頼の欠如だと悪くとらえることがあります。彼らは自分が何らかの失敗をしたと考え自分を責めるのです。」
カミングアウトされて戸惑う人に「カミングアウトされるのは信頼されてる証拠」と言って励ますことがありますが、それならばカミングアウトされずにいる自分は信頼がないのか?と考えるのは無理もないかもしれません。

ウェスリーさんは、カミングアウトされないことは親子関係の失敗ではないと断言します。それでも子供は親の失望や拒絶を恐れている場合もあります。子供から話してほしいなら、親が同性愛に関する価値観をはっきり示し、話しても大丈夫だと思える家庭環境を築こう、といくつか提案しています。

・自分たちとは異なる家族の話をする。
・愛する人は異性でなくてもいいと話す。
・「好きな人いる?」のように性別を特定しない表現を使う。
・同性愛者をさげすむような発言をしない。
・同性愛者を描いた映画やドラマを一緒に見る。
・ニュースやテレビに出てくる同性愛者に肯定的な反応をする。
・LGBT運動への支援を示す。
・LGBTの知り合いがいれば家に招く。誰かと会うことで子供は明るい将来を思い描きやすくなる。

大切なのは同性愛の話題をタブー視しないことのようです。
「子供に拒絶感を与えないようにする一番の方法は、子供の人生の細部に関わり続けること、また、あなたにとって居心地が良くないかもしれない話題を避けないことです」とトブケスは言う。
「特定の話題を避けるのは、あなたがそれらを受け入れていないかもしれないという暗黙のメッセージを送ることになります。お子さんが日頃から何をどう感じているのか尋ねてください」
Don't Ask, They'll Tell | Psychology Today (2017)

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もうひとつ、親向けのアドバイスとして書かれた記事から簡単に抜粋します。
執筆者はダニエル・オウェンズ=リード(Dannielle Owens-Reid)とクリスティン・ルッソ(Kristin Russo)。二人は親向け情報サイト「My Kid Is Gay」の共同設立者で、『LGBTの子どもに寄り添うための本』(白桃書房)という著作もあります。
10 Tips for Parents of Gay Kids | Advocate (2014)

二人によると、子供が親にカミングアウトせずにいるのは、まだ言う準備ができていない、そもそも自分をゲイやトランスジェンダーだとは考えていない、など色々な理由が考えられます。そんな時は、自分自身への理解が深まるよう一人の時間を与え、その間に子供が安心して話せる家庭環境を整えておくよう提案しています。
私たちが活動を通して出会った子供たちのなかには、親から「ゲイなの?」と聞かれたことのある子がたくさんいます。そしてその多くがパニックになって「まさか!違う!」と答えてしまったと言います。一度否定してしまうとその後のカミングアウトは1000倍も大変になります。最初の段階で親に嘘をついてしまったと感じるからです。
あなたにできることは、快適で支えとなる家庭環境を築き、LGBTQ+コミュニティへの支援を声にすることです。そうすればお子さんは、心の準備が整った時には本当の自分を愛してもらえると確信できるでしょう。