2015年10月26日月曜日

同性愛コミュニティと異性愛配偶者の間にある溝

ベンチに並んで座る男女の画像
夫や妻が同性愛者だと判明した配偶者は、周囲にその話をすると複雑な立場に立たされるといいます。
同性愛に否定的な人たちは同性愛者を非難したがり、同性愛者やその支援者たちは同性愛者の弁護をしたがり、結果、かれら配偶者の話に本当に耳を傾けてくれる人は少なく、孤立を深めていくのだそうです。

異性愛の配偶者(straight spouse)や性的指向が異なる者同士の結婚(Mixed-orientation marriage)を支援するアメリカの非営利団体「Straight Spouse Network」のブログから、夫がゲイだったというケリーさんの文章を紹介します。

Try, try, try to understand |Straight Spouse Network (2014)

夫や妻が同性愛者だったという話が出ると、同性愛の活動家や支援者たちは、異性と結婚することになった同性愛者への理解を求めます。
ケリーさんはそのたびに異性愛配偶者としての苦しみや損害について語るのですが、そうした発言は同性愛コミュニティに対して友好的ではないものとして煙たがられる場合があるようです。
なぜなら、元夫のクローゼットからカミングアウトするという、このぬかるんだ、まがりくねった、轍のついた道を行く私のこれまでの経験から言えば、[同性愛の]活動家/支援者側も、同性愛嫌悪者側も、異性愛配偶者にとってそれがどういうことなのか、あまり理解しようとはしたがらないからです。私たちはあまりにも面倒で、分かりづらく、扱いづらいのです。

私たちの多くは精神的に傷つきながらも、新しい「クローゼット後(ポスト・クローゼット)」の世界で果敢に自分の人生を元通りにし、子供たちの生活を安定させようとしています。うまくやれる時もあれば、そうではない時もあります。私たちはつまずくのです。怒り、辛辣になり、傷つき、あまりに人間的すぎるのです。
※太字部分は原文では大文字の"WANTS"

同性に惹かれる自分を受け入れることのないまま異性と結婚していく人たち。その背景にあるのは、社会に根ざす同性愛への嫌悪や抑圧だという指摘があります。それならば、かれらと結婚した配偶者もまた同じ同性愛嫌悪の被害者といえるはずなのに、既婚の同性愛者たちが同性愛コミュニティから受け入れられる一方で、自分たちは歓迎されていないとケリーさんは感じています。

ケリーさんが望むのは、ただ、心を開いて話を聞いてくれることです。
私たちの立場で人生を生きたこともなく、この独特の痛みを感じたことがないのなら、そんなに即座に片付けてしまわないでほしい。それはまさにあなた方がやっていることです。二言目には相手を許すべきだとか、結婚した時には気づいていなかったんだとか、自分の中で認める準備ができていなかったんだとか。まるで私たちがそうしたことを今までに聞いたことも考えたこともないと、あなた方は考えているかのようです。

異性愛配偶者がみな、哀れな同性愛者に異性愛者であれと無理強いするような、怒り狂った同性愛嫌悪者というわけではありません。私たちの多くはLGBTの支援者です。プライド・パレードを歩き、私たち[異性愛配偶者]をつくりだしたまさに一因である嫌悪を根絶すべく、時間と労力を注いでいるのです。
私たちの元配偶者の言動を弁明しなくてはいけないと思いこむよりも、ただ私たちの話を聞こうとしてほしい。理解されることを望む前に、私たちを理解しようとしてほしいのです。
Try, try, try to understand |Straight Spouse Network (2014)


《関連リンク》
異性愛配偶者の貴方へ:連れ合いはLGBT |NPO法人 LGBTの家族と友人をつなぐ会

《ブログ内関連ページ》
夫は妻は同性愛者 - 孤立する異性愛配偶者たち
[体験談]ゲイだった夫との離婚を乗り越えた女性からのアドバイス