2015年3月15日日曜日

【インド】パレードを歩く親子たちと伝統的な結婚

インド国旗の画像
1月にインドのムンバイでプライド・パレードが行われました。インドの新聞記事から家族にまつわる部分を拾って紹介します。調べている最中に次から次へと記事を見つけてしまったため、長めです。

インドではイギリス植民地時代につくられた法律により、同性間の性行為が犯罪とされてきました。2009年にデリー高等裁判所が違憲判決を出したものの、2013年の12月に最高裁がこの判決を破棄。再び違法となっています。
インド最高裁、同性愛を認めず―下級裁判決を棄却 |ウォール・ストリート・ジャーナル

それから1年経ち、LGBTに対する脅迫やレイプ、警官からの嫌がらせなどが増加しているという報告もあります。
Persecution of India's sexual minorities surges after court ruling - activists |Reuters

一方、デリー、コルカタ、バンガロール、ハイデラバード、プネーなど、各地でプライド・パレードと呼ばれるようなイベントは行われていて、1月31日にムンバイで行われた「クィア・アザーティ・マーチ」の参加者は5000~7000人(記事によって違う)と、同イベント最大級の規模となったそうです。
ムンバイで7000人のゲイパレード-虹色の旗掲げ、理解と権利を求める|ムンバイ経済新聞

家族の参加者の増加

このムンバイでのパレードは2008年に始まりました。その時に関わった活動家のVikram Doctorは、以前より家族の参加者が増えたと言います。
「最初の頃は、同性愛者に混じって母親や姉妹やおばさんの姿が時折見える程度でした。父親や兄弟も進み出てくれるようになったのは嬉しいですね」

ビューティー・コンテストの世界大会、「ミスター・ゲイ・ワールド」2014年のインド代表で、テレビなどで活躍しているSushant Divgikarは父親と一緒に参加しました。
父親「息子がゲイで私はうれしいです」
息子「LGBTQの子の親たちが、みんな父のようであってくれたらいいですね」
Rainbow streaks through Mumbai |dna

苦悩する親子たち

27歳のダンス講師、Sujeet Tikkuが5年前に親にカミングアウトした時、両親は息子を「正常」に戻そうと、お寺と病院に連れて行きました。
「[お寺で]祈祷のために座らされ、ほうきでぶたれました。祈祷の効果がないとわかると、ヴァシにいる『医者』のところで電気ショックとテストステロンを増やす薬を与えられました。それら全てが失敗に終わると、両親に勘当されました」
Tikkuは両親と3年以上、話もしていません。ただ、2人の姉妹とその夫たちは協力的で、頻繁に訪ねてきてくれるそうです。

メディア関係の仕事をしている25歳のLeena D’Souzaも親に言われ、多岐にわたるカウンセリングや僧侶との面会を繰り返しました。
「両親には私が男の子ではなく女の子が好きだなんて信じられなかったんです。ほとんどの僧侶は、私のしていることがどれほど重大な罪かという話をしました。でも自分で女の子を好きになろうと選んだわけではなく、ただ、そういう人間なんです。長く鬱状態が続きました。でも気づいたんです。自分自身であることが罪だというなら、神様は私を理解してないんだって」

30歳のレズビアンParinandini Joshiの場合、両親は喜んで受け入れてくれたと言います。
「両親に話した時、2人はすごく落ち着いて『そんな気がしてた』って。2人がオープンで批判的でないと知ってすごくうれしかった。ずっと2人の反応を恐れていたけど、実際はとても理解がありました」

俳優で映画監督、LGBT活動家でもあるNakshatra Bagweの母親Swatiさんは当初の苦しみを乗り越えてきました。
「初めて息子からゲイだと告げられた時、カウンセリングを受けて治療方法を探すよう勧めました。でも徐々に事実を受け入れていきました。はじめの頃はとても辛かった。でも今は、私も夫もゲイの息子を誇りに思っています」

彼女は息子の友人たちにとっても母親のような存在になっているそうです。
「多くの男の子や女の子がゲイやレズビアンだという理由で親から見放されています。本当に悲しいことです」
「息子の友達には、自分たちの母親を懐かしんで私をマミーと呼ぶ子がたくさんいます。彼らに料理を作ったり悩みを聞いたりするのが大好きです。やはり親というものは子供を支える柱にならなければいけません」
Beatings, electric shocks and medicines... |MiD DAY

パレードを歩く新婚ゲイカップル

共に27歳の男性カップル、VaibhavとMilindの両親も2人の関係にあまり協力的ではないそうです。しかし、2人はいとこや友人たちの全面協力のもと結婚式を挙げました。伝統的なマラティ式の結婚式を執り行ってくれる「パンディット」を苦労して探し出し、メヘンディやハルディ、サンギートといった伝統儀式も行い、当日は婚礼衣装のままパレードに直行しました。

2人の結婚式が新聞などで報じられると、友人だけでなく近所の人たちや昔の同僚からもお祝い攻めに会い、想像以上のポジティブな反応に圧倒されたと語っています。
A Gay Couple Got Married In A Small Maharashtrian Wedding Then Attended Mumbai’s LGBT Pride March |BuzzFeed

我が子に伝統的な結婚を

前出の俳優Nakshatra Bagweの母Swatiさんは、息子と未来の夫が伝統的な結婚式で結ばれるのを望んでいます。
「息子がゲイだという現実を受け入れるのに数年かかりました。最初は息子をののしったこともありますが、次第に受け入れることを学んでいきました。親なら誰しも我が子の盛大な結婚式を夢見るものですし、私も同じです。ヨーロッパにいたときゲイの結婚を見て、国によっては同性婚も受け入れられているのだと知りました」

前出の「ミスター・ゲイ」Sushant Divgikarの父親は、結婚については息子の意思を尊重しつつも、やはり自分の希望もあるようです。
「息子の人生ですし、彼の選択です。豪華な結婚式がいいというなら手配しますし、裁判所で結婚したいというなら、私は披露宴を盛大なものにします」
Mumbai: LGBT look for the perfect mate |MiD DAY

ムンバイの大学院による調査

パレードが行われたのと同じ週、LGBTの子を持つ親への調査が発表されました。
調査を行ったのは、タタ社会科学研究所(TISS)のアシスタント・プロフェッサー(助教)、Ketki Ranadeさんです。彼女によるとデリー高裁の判決後に家族会もいくつかできたそうで、家族の体験を記録する必要性を感じたのだと言います。

子供の性のあり方を知った家族の大半が、ショック、否認、沈黙といった否定的な感情、さらには引きこもりすら経験していました。そこを乗り越えてきた親たちは、情報を集めて学び、人と話すことが大切だと語っています。
「調査で明らかになったのは、他の親からの助言や支援が多くの人の心理的抑圧を打開する力となっていることです」

また、子供のパートナーと会うことも不安を減らすのに有効だそうです。しかし、一番大切なのは子供と話すことだと言います。
「レズビアンの娘やゲイの息子との関係が何よりも重要です。ほとんどの回答者が、最終的に我が子との会話のおかげで安心できるようになったと答えています」
Family support for LGBT community, reveals study by Mumbai institute |MiD DAY

《参考リンク》
Knot your everyday love stories |dna
More support from siblings than parents for homosexuals |Times of India
Mumbai’s LGBT Community Had Some Wise Words To Tell Their 15-Year-Old Selves |BuzzFeed
Mumbai’s LGBT Community Revealed The Cruelest Things They’ve Been Told |BuzzFeed